トマトの葉が巻いてきたら注意!原因はコナジラミ?疑うべきトマト黄化葉巻病(TYLCV)と対策
- daikihirayama3z
- 7 時間前
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1. はじめに
ハウスで順調に育っていたトマトの葉先が突然くるりと内側へ巻きはじめ、全体が黄色味を帯びて硬くなってきた——そんな経験はありませんか? この症状の裏には、タバココナジラミが媒介するウイルス病「トマト黄化葉巻病(Tomato Yellow Leaf Curl Virus:TYLCV)」が隠れている可能性があります。本記事では、写真と表で分かる症状チェックリスト、TYLCVかどうかを見極める診断フローチャート、緊急措置から生物的・化学的防除、日常管理チェックリストまでを一気通貫でご紹介。発生初期に正しく対処し、収量ロスを最小限に抑えましょう。

2. 症状チェック|トマト葉巻(巻葉)の特徴
観察部位 | 初期症状 | 進行症状 |
若い頂葉 | 葉縁が上向きに巻く(カール)、淡黄化 | 葉身が厚く硬くなり強く内巻き、鮮黄色化 |
成葉 | 軽い黄化、モザイク | 全体黄化、葉脈の緑残存(虎斑状) |
茎・全株 | ― | 節間短縮、萎縮、生育停滞、着果減 |


3. 似ている症状で考えられる原因(病害虫)一覧
病害虫 / 生理障害 | 典型症状一致度 | 発生環境 | 確認ポイント |
---|---|---|---|
トマト黄化葉巻病(TYLCV) | ★★★ | 高温期・密閉ハウス、コナジラミ多発 | 葉裏にタバココナジラミ、ウイルス免疫試薬陽性 |
ミネラル欠乏(カルシウム・ホウ素等) | ★★☆ | 高温乾燥、急激な日射 | 頂芽付近のみ軽度巻葉、黄化弱い、ウイルス検定陰性 |
除草剤ドリフト | ★★☆ | 周辺圃場で散布 | 巻葉強いが葉脈黄化少、複数株同時発生 |
高温生理障害(40 ℃超) | ★☆☆ | 真夏日換気不良 | 上位葉軽度巻葉、温度低下で回復 |
4. 対策ガイド
4-1. 緊急措置(24時間以内)
感染株の即時除去:巻葉が顕著な株は根ごと抜き取り、二重の袋に密封して焼却または深く埋設。
搬出・搬入動線の区分け:健全株区域と作業動線を分け、作業順序は健全→疑わしい→感染株の順。
速効性薬剤散布:プレオフロアブル、チェス顆粒水和剤などを全面散布(登録ラベル遵守)。
参考記事
4-2. 環境調整(IPMの基礎)
管理項目 | 目安値 | 効果 |
---|---|---|
換気開始温度 | 28 ℃以下 | タバココナジラミの繁殖抑制 |
相対湿度 | 60–75 % | タバココナジラミの繁殖抑制 |
昼夜温度差 | 7 ℃以上 | 生育健全化でウイルス影響を緩和 |
網目サイズ | 0.4 mm以下防虫ネット | 成虫の進入阻止 |
4-3. 生物的防除
推奨天敵:バコトップ(タバコカスミカメ剤)と天敵のごちそうの併用。天敵放飼前に天敵のごちそうを散布。定植後すぐにバコトップを0.5–1個体/株相当で放飼し、その後2週おきに天敵のごちそうを撒布して餌資源を維持。
併用NG薬剤:合成ピレスロイド、広域殺虫剤(クロルピリホスなど)は天敵に高毒性。各農薬メーカーの農薬影響表を要確認。
4-4. 化学的防除
商品名(例) | 有効成分 | 希釈倍率 | 散布適期 |
---|---|---|---|
モベントフロアブル | スピロテトラマト | 1000–2000倍 | コナジラミ発生初期 |
ベネビアOD | シアントラニリプロール | 500–1000倍 | 幼虫中心期 |
粘着くん液剤 | ヒドロキシプロピルデンプン | 100倍 | 成虫飛来抑制・卵期 |
参考記事
注意:
登録内容は地域・作型で異なるため最新ラベルを必ず確認。
5. 予防と管理のチェックリスト
☐ 黄色粘着トラップを5 m間隔で設置、週1回、タバココナジラミの補虫数を確認。
☐ ハウス側窓に0.4 mm防虫ネットを常設、開閉部にカーテン方式を採用。
☐ 収穫コンテナ・作業着を毎日ハウス外で洗浄・風乾。
6. 失敗しがちなNG例
耐性対策をせずイミダクロプリドを連用 → コナジラミに高レベルの抵抗性が急速に出現。
発病株を残したまま薬剤散布のみ → ウイルスは治らず感染源が温存。
低温期に換気を極端に絞る → 成虫飛来が継続し密度上昇、春に一気に大発生。
7. FAQ
Q1:感染した株は薬剤で回復しますか?
A:残念ながらTYLCVは植物体内で増殖するため、感染後の治療薬はありません。発病株は速やかに除去し、新たな感染を防ぐことが重要です。
Q2:抵抗性品種だけで十分ですか?
A:抵抗性遺伝子を持つ耐病性台木・品種でも、強い虫害下では感染する例があります。コナジラミ密度管理が不可欠です。
Q3:冬にハウスを空にすればウイルスは無くなりますか?
A:作物残渣や雑草、施設部材上に残ったコナジラミが越冬し、翌シーズンに再感染する恐れがあります。徹底清掃と雑草管理が必要です
8. まとめ(200~300字)
トマト黄化葉巻病はコナジラミ密度が高い施設で爆発的に広がり、収量を大きく落とす厄介なウイルス病です。巻葉や黄化を確認したら、感染株を除去しコナジラミをゼロに近づける緊急対応が鍵。併せて防虫ネット・天敵・薬剤ローテのIPMを徹底し、苗検定とハウス衛生管理で持ち込ませない仕組みを作りましょう。