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トマトの葉に灰色の斑点──原因は疫病?防除ガイドとIPM対策


ハウスや露地でトマトの葉に「灰色の斑点」が現れたら要注意です。特に疫病は最初は小さな病斑でも、進行するにつれて病斑は拡大していき、最終的に株の上部が枯死へと至ります。果実にも病斑が現れ、感染による腐敗で商品価値を失うリスクがあります。この記事では、灰色斑点の主原因として多発する疫病(Phytophthora infestans)を中心に、症状判別フロー・緊急防除・IPM(総合的病害管理)までを網羅しています。さらに「ジマンダイセンフロアブル」「ダニコール1000」など主要登録薬剤、湿度管理といった予防策も具体的に示します。読後、実践できるチェックリストを用いて被害拡大を未然に防ぎましょう。


1. 症状チェック|疫病の特徴

観察部位

初期症状

進行症状

葉・茎

灰緑色の病斑。多湿時は白いカビが生じる。

病斑が拡大し暗緑色となる。茎や葉柄にも同様の病斑が生じ、上部が萎凋→枯死。

果実

茶褐色の病斑。

病斑部が腐敗。

ポイント:20~25℃、多湿で疫病が発生しやすい。また、降雨や結露で病原菌伝搬。病斑部に白いカビが出れば疫病の可能性大。
葉の初期症状
葉の初期症状
果実の初期症状
果実の初期症状

2. 考えられる原因一覧(疫病との比較)

病害

典型症状との一致度

発生環境

確認ポイント

疫病

★★★

20–25 ℃・多湿 降雨時

灰緑色~暗緑色の病斑、病斑部に白いカビ

葉かび病

★★☆

20–25 ℃・多湿 降雨時

葉の表面に淡黄色斑点、裏面には灰黄色~緑褐色のビロード状のかび

斑点細菌病

★★☆

20–25 ℃・多湿 降雨時

葉の表面に水浸状の暗褐色小斑が発生し、周囲が淡黄色になる


3. 対策ガイド


3-1. 緊急措置(24時間以内)


  • 感染葉や果実を切除し、圃場外へ持ち出し適切に処理

  • 施設栽培であれば、換気・送風を行い湿度を下げる

  • ジマンダイセンやダコニール1000などをの薬剤を登録やラベルを確認した上で散布



3-2. 環境調整(IPMの基礎)

管理項目

目安値

効果

湿度

80 %以下

疫病発生を抑制

葉面湿潤時間

6時間未満

疫病発生を抑制

風速

0.3m/s 前後(風通しを良くする)

葉面の乾燥を促進

3-3. 生物的防除


  • 微生物資材:トリコデソイル(有用微生物 トリコデルマハルジアナム T-22株)は土壌づくりをサポートし、病害が発生しにくい土壌環境にする資材。

  • 併用NG薬剤:広域殺菌剤(ベンレート水和剤トリフミン水和剤などの DMI 剤に分類される殺菌剤)は拮抗菌を抑制する恐れ。


3-4. 化学的防除(疫病の場合)

商品名

有効成分

希釈倍率

散布適期

ジマンダイセンフロアブル

マンコゼブ

500倍

定植直後〜収穫期の予防散布

ダニコール1000

テトラクロロインソフタロニトリル(TPN)

1000倍

定植直後〜収穫期の予防散布・初発直後

Zボルドー

塩基性硫酸銅

400~600倍

定植直後〜収穫期の予防散布・初発直後

オーソサイド水和剤80

キャプタン

800~1200倍

定植直後〜収穫期の予防散布・生育期のほか、種子消毒、幼苗期の土壌灌注


注意:登録内容は地域・作型で異なるため最新ラベルを必ず確認。

4. 予防と管理のチェックリスト

病気発生前の予防散布を上記のような農薬を用いて行う。

作業ごとに使用した器具(ハサミ・手袋など)を次亜塩素酸で消毒(30分ごと目安)

換気を行い、湿度を80%以下に抑えつつ、葉面濡れを防ぐ 収穫終了後は残渣を圃場外で適切に処理。


5. 失敗しがちなNG例

  1. 耐性菌リスクのある薬剤連用 → 耐性菌リスク増大。

  2. 換気や通風不足によって多湿・葉面濡れ→疫病発生リスク増加。

  3. 発病株を圃場内で放置→ 疫病発生拡大、翌年の1次伝染源になる。


6. FAQ


Q1. 病斑が出た葉を切るだけで病気の発生拡大止まりますか?

A. 葉を切除するだけでは、病気の発生拡大を抑制できないことがほとんどです。前述したような環境管理と予防薬剤の併用が必須です。


Q2. 雨除けハウスでも疫病は出ますか?

A. 高湿度が続けば発生します。通風不足と多湿が主因なので、送風や換気を行うことで湿度を下げましょう。


Q3. 収穫直前でも使える薬剤はありますか?

A.前述したジマンダイセンフロアブル、ダニコール1000、Zボルドー、オーソサイド水和剤80は収穫直前まで使用可能です。



7. まとめ


今回はトマトの疫病を中心に症状~対策まで解説しました。灰色斑点は疫病や葉かび病をはじめ複数の病害の可能性が考えられます。適切な診断と予防、初期の対応がトマトの健全な生育を左右します。まずは、葉の病斑やカビ、環境条件から原因を絞り込み、発病葉の除去と登録薬剤の即時散布で二次感染を遮断しましょう。同時に温湿度・葉面湿潤時間を管理し、病害の拡大を抑制する環境設計を心がけましょう。チェックリストを印刷して作業台に貼り、発病前に予防散布を計画することが被害ゼロへの近道です。




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