トマトモザイク病ー葉にまだら症状が出たら注意!トマトで疑うべきウイルス病(ToMV/CMV/TSWV)と今すぐできる対策
- hinatamagawa5j
- 1 日前
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ハウスや露地のトマトで、葉の色がまだらに抜けたり、しわが寄ったりする「モザイク症状」を見つけると、「ウイルスが入ったのでは?」と不安になる方が多いはずです。
本記事では、モザイク症を引き起こす代表的なトマトモザイクウイルス(ToMV)を中心に、似た症状を生むその他のウイルスや生理障害との見分け方を診断フローチャート形式で解説します。
さらに、発見直後に取るべき緊急措置、温室環境を整えて再発を防ぐIPM(総合的病害虫管理)の具体策、そして最新の防除薬剤・消毒剤リストまで網羅。記事末尾のチェックリストを活用すれば、明日からの作業計画が明確になります。
1. 症状チェック|まだら模様(モザイク症状)の特徴
観察部位 | 初期症状 | 進行症状 |
---|---|---|
葉 | 明緑色~淡黄緑のモザイク、葉脈の透け | 葉のしわ・縮れ、葉柄のねじれ、矮化 |
茎 | 斑点状のえそ | 成長停滞、節間短縮 |
果実 | 外観に症状出にくい | 着色不良、表面のざらつき |
ポイント
葉を逆光で透かすと濃淡がはっきり確認できる・病斑がランダムで、葉脈をまたいで広がるのがウイルス病の典型・症状は株ごとにバラつきが大きく、部分的に現れる場合も多い



2. 考えられる原因(病害虫)一覧
病害虫 | 症状一致度 | 発生環境 | 確認ポイント |
---|---|---|---|
トマトモザイクウイルス(ToMV) | ★★★ | 20–30 ℃、作業による機械伝染 | 切り口・手袋から感染、抵抗性台木で軽症化 |
キュウリモザイクウイルス(CMV) | ★★★ | 春秋の15–25 ℃、アブラムシ媒介 | まだら+リング斑、アブラムシ発生状況 |
トマト黄化えそウイルス(TSWV) | ★★☆ | 25–30 ℃、アザミウマ媒介 | 若葉に褐色リング斑、果実にブロンズ斑 |
薬害・マンガン過剰 | ★☆☆ | 土壌pHが低く酸性化した圃場、有機物の多い圃場 | 散布直後に発生、葉縁から症状進行、黒褐色の壊死斑が現れる |
3. 対策ガイド
3-1. 緊急措置(24時間以内)
症状葉とその株を抜き取り、45 Lポリ袋に密封して圃場外で焼却または深く埋設
ハサミ・トレイ・ポットなどを0.5 %次亜塩素酸ナトリウムまたはケミクロンGで瞬間浸漬消毒
アブラムシ・アザミウマが多発している場合は、モベント®フロアブルを株元灌注して吸汁害虫の拡散を抑制
3-2. 環境調整(IPMの基礎)
管理項目 | 目安値 | 効果 |
---|---|---|
温度 | 18–25 ℃(夜温18 ℃) | 高温ストレス低減で症状の顕在化を抑制 |
相対湿度 | 65–80 % | アザミウマ繁殖抑制・アブラムシ飛来低減 |
黄・青粘着板 | 2 m × 5 m間隔で吊下げ | アザミウマ・コナジラミ成虫の捕殺+飛来モニタリング |
3-3. 生物的防除
推奨天敵
メリトップ (ククメリスカブリダニ)—アザミウマ発生初期に50〜100頭/株放飼(3ボトル〜/10a)
リクトップ (タイリクヒメハナカメムシ)—アザミウマ発生初期に1000〜3000頭/10a放飼
コレトップ (コレマンアブラバチ)—アブラムシ初発時に寄生蜂マミーを1000〜2000頭(4〜8ボトル)/10 a設置
併用 NG 薬剤リスト
ピレトリン系、アセタミプリド、ジノテフラン製剤は放飼前後3日間は使用しない
3-4. 化学的防除
分類 | 有効成分 | 希釈倍率 | 散布適期 |
---|---|---|---|
スタークル粒剤 | ジノテフラン | 1g/株 | アブラムシ初発時、定植時〜生育期 |
モベントフロアブル | スピロテトラマト | 2,000倍 | 収穫前日まで |
アドマイヤーフロアブル | イミダクロプリド | 4,000倍 | アブラムシ初発時、収穫前日まで |
グレーシア乳剤 | フルキサメタミド | 2,000倍 | アザミウマ初発時、収穫前日まで |
注意:
登録内容は地域・作型で異なるため、必ず最新の登録ラベルと都道府県病害虫防除所の指導情報を確認してください。
4. 予防と管理のチェックリスト
☐ 苗導入時に抵抗性台木(Tm-2a型遺伝子)付き苗を選ぶ
☐ 作業ごとにハサミ・手袋を次亜塩素酸で消毒(30分ごと目安)
☐ 週1回の黄板トラップでアザミウマ・アブラムシ密度を記録
☐ 肩口換気+循環扇で温湿度ムラを解消し、葉面濡れを防ぐ
☐ 収穫終了後は残渣を圃場外搬出し،太陽熱養生処理で土壌消毒
5. 失敗しがちなNG例
症状株を放置して観察 → ウイルス量が爆発的に増え、全圃場へ拡大
天敵放飼直後に合成ピレスロイドを散布 → アザミウマは残り、天敵だけ壊滅
同じハサミ・カッターで芽かきを一気に進める → 傷口から伝染、健全株までモザイク化
6. FAQ
Q1. モザイク症状が出た株を薬剤で治せますか?
A. 現在、ウイルスを治療する薬剤はありません。防除は感染株の除去と伝染経路の遮断が基本です。
Q2. 症状が軽い枝だけ切り取れば助かりますか?
A. ウイルスは全身感染するため部分除去では不十分です。株ごと処分してください。
Q3. 土壌くん蒸でウイルスは死にますか?
A. ToMVは植物残渣中で長期間生存しますが、太陽熱養生(透明マルチで6週間50 ℃以上)で感染力を大幅に低減できます。
7. まとめ
トマトモザイクウイルスは手袋やハサミから瞬く間に伝染し、吸汁害虫が媒介すれば被害は圃場全体へ連鎖的に拡大します。症状を見つけたら24時間以内に株ごと除去し器具を消毒。
さらに粘着版トラップと天敵導入で媒介虫密度を抑え、換気・温度管理で植物ストレスを軽減することが再発防止の鍵です。
治療薬は無いので、予防とIPMが唯一の手段。作業計画に『早期発見・即対応・媒介虫防除』を組み込み、健全株を守り抜きましょう。抵抗性台木の採用や作業ごとの消毒を習慣化すれば、長期的なリスク低減にもつながります。安心して収穫期を迎えましょう。