【農家さんインタビュー】“自分で決めて、自分で育てる”楽しさを。トマトとIPMで攻め続ける—馬場勝農園・馬場 勝さん
- daikihirayama3z
- 10月3日
- 読了時間: 5分
今回は、東京都日野市の平山城址公園駅から徒歩5分のトマト農園『馬場勝農園』の馬場勝さんにインタビューさせていただきました!
「農業はね、自分で決めて、自分で動く仕事。だから面白いんです」
31年の会社員生活を経て就農した馬場さん。ハウスは全自動化、栽培は多品種トマトとIPM(総合防除)を軸に科学的に“おいしさ”を追求する馬場さんのスゴさに迫ります。

1. プロフィール
お名前:馬場 勝 さん
農園:馬場勝農園
主な作物:トマト(大玉・中玉・ミニ/毎年約10品種)、露地野菜(キャベツ・大根など)
販売:学校給食向け出荷、直売所、Farmer's market東京 みなみの恵み ほか
取材場所:ハウス・苗場/圃場
──まずは自己紹介と今までの経緯を教えて下さい。
馬場さん:31年会社員をやってから就農しました。うちは代々農家だったので、いつか自分も就農するんだろうと思っていました。そういった経緯もありましたので、大学も千葉大学の園芸学部に進学しました。中学生、高校生の時も畑に駆り出されて、実は少し嫌でした(笑)。 当初はあまり農業をやりたいとは思っていなかったのですが、両親が二人でずっとやっていたので途絶えさせちゃいけないなという意識はありましたね。

2. 農業を続ける中での課題と学び
──今まで農業を続けてきた中で、大変だったことはありますか?
馬場さん:農業を始めて2年目、平成26年の大雪でハウスが全壊したときですね。再建まで、資材も職人も足りない。見積りすら取れない混乱で、本当に骨が折れました。でも、全壊したハウスは30年使っていたのでそろそろ新しくしようと考えていたところだったので、ちょうど良かったと思うことにしました(笑)。

馬場さん:立て直した際には、東西棟→南北棟へ見直し、カーテン等は自動化して最新のハウスにしました。 手動時代は開け閉めだけで毎回2時間超かかっていたので、仕組みから作り直したのは大きかったです。 ──最近では、困っていることはありますか?
馬場さん:やはり気候です。35℃超の高温と雨の少なさ。キャベツは虫がいないのに成長点がやられる症状が出る年があり、高温障害を疑っています。大根の発芽は2割まで落ち込んだ回も。乾燥で土が締まって根形不良になりやすい。害虫の発生ピークが後ろへズレるなど、タイミングの再設計も必要になりました。
対策は、遮光ネット、潅水の徹底、定植や播種の前倒し。それでも年によって効きが変わるので、小さく試し、早く切り替えることを心がけています。
3. トマト栽培へのこだわり
──馬場さんのトマトは、毎年ミニ中心に10品種前後栽培されているんですね。
馬場さん:1列ごとに品種を切り替えて食べ比べたりして、毎年色んな品種を選抜しています。こんなことやってるのはうちくらいかもしれません(笑)。プチぷよは“ぶどうのような食感”でファンが多いけれど、温度域や生育スピードのクセが強い、というような難しい部分もありますから。
──トマト栽培へのこだわりはありますか?
馬場さん:糖度だけでは測れない美味しさを追求したいなと思っています。甘さだけではなく、酸味・うま味(グルタミン酸)のバランスが味。 味の深さっていうのは、土耕のほうが出やすいのではないかと感じています。根圏の微生物ネットワークが栄養や前駆体をやりとりしている——という仮説を置いています。なので、施肥は有機質厚め(馬ふん堆肥・米ぬか+海藻粉末・カニ殻・魚エキスなど)。微生物の多様性=味の多様性という考え方です。

4. IPM、天敵への取り組み
──天敵としてタバコカスミカメ、温存植物としてクレオメを入れていますが、手応えはいかがですか?
馬場さん:少し変わった作型をしていて、私は半促成栽培をやっています。定植は11月頃に行います。春頃から徐々に増えてくるコナジラミ対策として、タバコカスミカメとクレオメは秋頃に導入しています。手応えとしては、天敵は手がかからない一方で、クレオメはやっぱり入れておく必要があるんだろうなと感じています。タバコカスミカメをもっと早く増殖させて、春に増えるコナジラミを迎え撃ちたいなと思っています。

──今シーズンは「天敵のごちそう」を使っていただきましたが、いかがでしたか?
馬場さん:冬から春にかけてタバコカスミカメを維持するのも一つの手かもしれません。圃場全体に、定期的に散布するのはコストもかかってしまうので、クレオメなどの天敵温存植物に散布してタバコカスミカメを増殖させる。これによって、春先の最初の一歩をリード出来るかなと思います。
5. 消費者、読者へのメッセージ
馬場さん:直売所やイベントで食べ比べを楽しんで、自分の“推し品種”を見つけてください。季節や天候で味は揺れますが、それも含めて生きた作物の面白さだなと思います。もし直売所で私と会ったら、味の感想をいただけると嬉しいです。
新規就農を考えている方へ伝えたいことは、農業はすごいやりがいのある仕事だなと思います。自分自身がやったことがダイレクトに返ってきやすい。(直売所で買ってくれた)お客さんからの「美味しかったよ」とか「今回はちょっとイマイチだよね」というような評価がモチベーションにつながりますし、「食を支える」ということ自体がすごい大事なことなので、農業は社会への貢献度が高い仕事だと感じています。

長時間にわたり、現場の知恵と仮説、そして自分で決めて動くという仕事観を惜しみなく共有いただき、ありがとうございました! 馬場さんの「美味しいものを作る」ことに対する情熱と、科学的に農業を行っていることが印象深く、大変勉強になりました!
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