【農家さんインタビュー】栃木県いちご狩りの先駆け、吉村農園が歩んできた40年—吉村農園 社長 吉村収さん
- daikihirayama3z
- 8月29日
- 読了時間: 5分
更新日:9月1日
今回のインタビューは、栃木県益子町でいちごを“体験の文化”に押し上げてきた吉村農園の吉村 収さんです!
約40年前の創業期からいちご狩りに取り組み、いまは観光農園・直売・カフェ・YouTubeやX、InstagramなどのSNS発信までを一気通貫で手がけ、地域と観光をつなぐ拠点となっています。
直売から観光へ、そして“自分で作って自分で届ける”という覚悟。約40年の歩みの先に、若い世代へ手渡したいものは何か。吉村収さんにじっくり伺いました!
1. ビジョンと信念──「また来たいな」を積み重ねる
──まずは“吉村農園の思い”から伺わせてください。吉村さんが長く大切にされてきたことは何でしょうか?
収さん:観光としてやっている以上、来てくださった方に「また来たいなぁ」と感じてもらうことが、いちばん大事なんです。ありがたいことに、益子は陶器の町でしょう。「陶器×いちご狩り」というご縁に恵まれて、いちご狩りを始められました。いちごは、その場で摘んで食べる時間が醍醐味なんですよ。パックで食べるのももちろん良いんですが、“体験としてのいちご”は特別で、文化として根づいていく力がある。これは日本でも、きっと世界でも通じる楽しさだと思っています。
また、昔の団体バスの時代から、今は個人でゆっくり楽しむ方が増えました。ネットでお客さまと直接つながれるようにもなって、「また来てね」と素直に言える関係ができた。栃木は“いちご王国”ですから、地域としての顔づくりにも少しはお役に立てたら嬉しいですね。

2. 益子焼がいちご狩りのきっかけを作ってくれた
──栃木県で最初にいちご狩りを始められたとお聞きし驚きました。きっかけは何だったのでしょうか?
収さん:益子焼の共販センターの社長さんに「やってみないか」と声をかけていただいたんです。当時はシステムもマニュアルもなくて、毎日が手探りでした。それでも、直売で培ってきた経験や、地域の方々の支えに助けられて。直売所がだんだん減っていく流れの中で、“体験”に舵を切れたのは、本当に運がよかったと思います。おかげさまで、最初の頃に比べるとハウスの面積は何倍にもなりました。けれど、芯は変わらず「お客さまが喜ぶ顔を見る」。そこなんです。
──最初は、いちごも観光も手探りだったのですね。
収さん:ええ、何もかも自分たちで考えるしかなかったです。お客さまへの接し方も、収量の波も、季節のやりくりも。それでも、まわりの人が助けてくれました。

3. 栽培の歴史と現在──道具が技術を育て、技術が味を支える
──約40年イチゴ栽培を続けられてきた中で、栽培技術の進化も見てこられたと思いますが、印象的な変化はありますか?
収さん:昔は竹の骨組みに“こも”をかけたトンネルで、収穫は3〜5月が中心でした。暖房設備も十分じゃなくてね。そこからビニールハウスが発達して、高設(ベンチ)も入ってきた。いちごは機械や道具が一つずつ揃っていって、農家が工夫して組み合わせることで、全体の技術が底上げされたと思います。品種改良も進みました。昔は苗を日光の山に運んで休ませ、花芽をつくる——そんな手間をかけていた時代もあります。今の高設も、まだ伸びしろがあるはず。生きもの相手ですから、学びは尽きません。
──近年は気候の変化も向き合うテーマになっていますか?
収さん:夏が暑くなってきて難しさはあります。でも、栃木は“採れる時期が早い”という利点もある。品種、設備、気候——全部を組み合わせて、年ごとに最適解を探す仕事ですね。
4. 経営の軸──「自分で作って、自分で届ける」
──いちご狩りにカフェ、直売やSNSなど、様々な取組みをされていますが、狙いはどこにありますか?

収さん:根っこはシンプルで、「自分たちで作ったものを、できるだけ無駄なく、目の前のお客さまに届けたい」。その積み重ねが“吉村農園”という小さなブランドになるのだと思っています。
農家は作る力が強みです。でも、売ることを人任せにすると、どうしても振り回されやすい。だから、自分たちの足でお客さまに会いに行く。もちろん、人手も体力も要ります。そのぶん、顔の見えるお付き合いができるのが嬉しいんです。
5. 新規就農者へ──“人の正解”より“自分の正解”
──これから農業を始める人に、どんな言葉をかけますか?
収さん:自分の正解を見つけてほしい。学ぶ、働く、工夫する。小さくてもいいから、続けられる形にする。設備にお金もかかりますから、計画が大事です。量をたくさん作るだけの時代でもありません。届け方も含めて、自分で選んでいく。時間はかかりますが、そのぶん誇れる仕事になりますよ。

6. これからの挑戦──技術を渡し、若い世代の背中をそっと押す
──今後、取り組みたいことはありますか?
収さん:若い方へ技術をちゃんと手渡したいですね。農業、農家の暮らし方、生き方そのものに悩む人も多いから、背中を“そっと”押せる存在でいたい。YouTubeやお話しの場(講演)なんかも、きっかけづくりになれば嬉しいです。
人のご縁をつなぐのも好きでしてね。種をまいて、芽が出るのをゆっくり待つ——農業らしいやり方ですが、人生も案外それでいいのかなと感じています。

吉村さん、ありがとうございました!
吉村農園の歴史の歩み、技術についてや、若い世代への思いまで、時間を割いて丁寧に語ってくださいました。
これからイチゴの新規就農を考えている方や、今後の農業について悩みがある方など、ぜひ吉村農園のYouTubeを見てみてください!
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