トマト尻腐れ病ートマトが黒ずむ?写真で診断・防除ガイド
- hinatamagawa5j
- 1 日前
- 読了時間: 4分

トマトを収穫しようとしたら、果実の“お尻”が黒く沈み込んでいた――そんな経験はありませんか? この症状は生理障害の一種「尻腐れ病(ブロッサムエンドロット)」が疑われ、対処を誤ると出荷ロスが拡大します。
本記事では写真での簡易診断フロー、カルシウム(Ca)欠乏を解消する灌水・施肥・葉面散布の具体策、再発防止のチェックリストをコンパクトにまとめました。
高温が続く今こそ、早期対応でロスゼロを目指しましょう。
1. 症状チェック|果実の黒ずみの特徴
観察部位 | 軽度症状 | 進行症状 |
---|---|---|
果実花落ち部(果実の下部) | 水浸状の淡褐色斑 | 黒褐色〜黒色に拡大・硬化 |

初期症状(淡褐色の病斑)

進行症状(黒褐色の病斑)
ポイント:
尻腐れ病は病原菌由来ではなくカルシウム欠乏が主因。萼側ではなく果実の下端(花落ち部)から黒ずむのが特徴。傷口に二次感染した場合は軟腐や炭疽病と混同しやすいので注意。
2. 考えられる原因(病害虫)一覧
病害虫 | 症状一致度 | 発生環境 | 確認ポイント |
---|---|---|---|
尻腐れ病(Ca欠乏) | ★★★ | 高温乾燥・水切れ・急激な肥大期 | 果実花落ち部のみ硬い黒斑、葉に異常なし |
炭疽病 | ★★☆ | 高湿多湿・25–30 ℃ | 果実全体にクレーター状陥没、病斑に粘質物 |
輪紋病 | ★★☆ | 高温多湿 | 果面に暗褐色水浸状の小斑点、葉にも同心円斑 |
3. 対策ガイド
3-1. 緊急措置(24時間以内)
潅水量を果実肥大期目安の1.2 倍に調整し急激な乾燥を回避。
カルシウムの葉面散布を行う ───「苦土石灰の水溶液」や「カルシウム剤(例:カルシウムスプレー)」を葉面散布。
3-2. 環境調整(IPMの基礎)
管理項目 | 目安値 | 効果 |
---|---|---|
夜間温度 | 18–20 ℃ | Ca移行促進、果実生理ストレス低減 |
灌水EC | 1.8–2.2 dS m⁻¹ | 高ECによるCa取り込み阻害を回避 |
土壌pH | 6.0–6.5 | Ca溶解性最大域を維持 |
3-3. 生物的防除
有用微生物入りの土壌改良資材「トリコデソイル」を定植時潅注するとCa吸収を補助する効果あり。根傷み病原菌を排除することで、Ca取り込みルートを確保します。
併用NG:高濃度銅剤・DMI〈トリアゾール〉系は微生物密度を大きく下げるため非推奨。
3-4. 化学的防除
商品名 | 有効成分 | 希釈倍率 | 散布適期 | 特徴・注意点 |
---|---|---|---|---|
カルプラス | カルシウム 8%、窒素、糖類、有機酸 | 400〜500倍 | 予防散布、着果後7日〜症状初期/10–14日 | 初期生育を崩さずCa補給が可能。展着剤を加用し、ていねいに散布 |
カルタス | CaO 10% | 300〜1,000倍 | 第1、第2、第3花房の各第1花の開花時 | 葉や果実面から速やかに浸透。散布後に白粉が残りにくい。高温・強日射時の散布を避ける |
カルクロン | 塩化カルシウム 72%以上 | 200倍 | 第1、第2、第3花房の各第1花の開花時 | 根が弱っている場合でも、高い効果が期待できる。散布が遅れると効果が出にくいので早めの散布が必要 |
注意:
上記はいずれも肥料または植物活力剤区分ですが、最新ラベルを必ず確認。
4. 予防と管理のチェックリスト
☐ 定植前に培土pHとCa飽和度を分析(pH6.0–6.5、Ca交換容量80 %目標)。
☐ 灌水ログを週次で確認し、水切れ日数ゼロを維持。
☐ 高温期は昼間33 ℃超で側窓・天窓を同時開放、果温35 ℃超を防止。
☐ K過剰を防ぐため、追肥の硝酸カリは症状発生株では停止。
5. 失敗しがちなNG例
乾燥回避目的で一度に過潅水 → 土壌無気状態となりCa吸収停止。
硝酸態Nの多用 → 樹勢過多で果実へのCa転流が不足。
炭酸カルシウム(石灰)追肥直後に大量潅水 → pH急上昇でリン酸欠乏などを誘発。
6. FAQ
Q1. 尻腐れ病は伝染しますか?
A. 病原菌性ではないため株間で伝染しませんが、症状果に二次感染した菌は他果へ広がるため速やかな除去が必要です。
Q2. 葉面散布と潅注、どちらが効果的?
A. 急性症状には葉面散布、長期予防には潅注併用が推奨されます。
Q2. Ca剤を散布すると果面が白く残るのは問題?
A. 高濃度散布で乾燥斑が残る場合がありますが品質には影響しません。次回希釈倍率を上げてください。
7. まとめ
尻腐れ病はカルシウム欠乏と水分ストレスが主因の生理障害です。果実下端の淡褐色または黒色の病斑を見つけたら、まず潅水とCa補給で急処置し、夜温・EC・pHを適正に保ちましょう。
Ca葉面散布は即効性、根圏改良は持続性――両輪で管理することで発生は大幅に抑制できます。診断チャートをプリントして温室に掲示し、発生ゼロの安定出荷を目指してください。