粘着くん液剤はどうやって使う?─ハダニやアブラムシ、コナジラミを防除する粘着くん液剤の使い方を徹底解説!
- daikihirayama3z
- 2 日前
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更新日:10 時間前
ハダニやアブラムシ、コナジラミ──施設園芸でほぼ通年悩まされる微小害虫は、薬剤抵抗性が進みやすく、定期防除でも思うように効かないことが珍しくありません。そこで注目したいのが、食品由来デンプンを有効成分とする“ソフト農薬”〈粘着くん液剤〉です。100倍希釈で葉裏までまんべんなく被覆すると、物理的な気門封鎖作用によって10〜20分で害虫を急速に失活させ、しかも収穫前日まで使えるためリカバリーが容易。IPMの要である天敵昆虫やマルハナバチへの影響も小さいので、薬剤ローテーションの「つなぎ」だけでなく、天敵放飼との組み合わせによる長期抑制にも最適です。本記事ではラベル情報とメーカー試験データを基に、粘着くん液剤の特徴・導入事例・散布手順から天敵併用のコツまで、最新情報を漏れなく整理しました。

1. 商品概要
分類 | ソフト農薬(物理系デンプン液剤) |
---|---|
主な対象害虫 | ハダニ類、アブラムシ類、コナジラミ類 |
使用場面 | 発生初期〜収穫期(収穫前日まで使用可) |
提供形態 | 1 L/5 Lボトル |
2. 特長・メリット
2‑1. 食品由来で人畜・環境にやさしい
有効成分はヒドロキシプロピルデンプン5 %──食品加工で広く用いられる安全性の高い素材で、有機JAS適合。
2‑2. 速効・物理作用で抵抗性に強い
散布液が乾く10〜20分の間に気門を塞いで致死させるため、薬剤抵抗性の有無にかかわらず有効です。
2‑3. 天敵・マルハナバチにほぼ影響なし
大型天敵昆虫やハチ類への影響はごく小さいため、IPM体系や授粉昆虫を用いる作型にも導入しやすい点が最大の強みです。
ポイントBOX:粘着くん液剤と一般的な殺虫剤との比較
粘着くん | 鉱物油乳剤 | 一般的な化学殺虫剤 | |
---|---|---|---|
収穫前日使用 | ◯ | △(作物による) | ×(3〜7日) |
天敵影響 | ◎ | △ | × |
速効性 | ◎(10–20分) | △(30分〜) | ◎(10分以内) |
薬害リスク | 低 | 中 | 低〜中 |
3. 導入事例・実証データ
作物・面積 | 散布条件 | 結果 |
---|---|---|
千葉県・イチゴ施設(500 m²) | ハダニ初発時、100倍希釈200 L/10aを葉裏中心に散布 | 3日後ハダニ密度が散布前比▲78 %、7日後も低水準を維持。その後スパイカルEX定着で長期抑制へ移行 |
熊本県・トマト(1,200 m²、高設) | コナジラミ発生初期スポット散布(100倍、150 L/10a)→24 h後バコトップ放飼 | 放飼7日後のコナジラミ成虫密度が対照区比▲65 %、天敵の生存率に有意影響なし |
4. 使い方・適切な散布/設置手順
準備物:
粘着くん液剤、清水、動噴または電動スプレーヤ(ノズル孔径0.5 mm以下推奨)、個人防護具(手袋・マスク)。
希釈倍率:
100倍(例:1 Lタンクに薬剤10 mL+水990 mL)。
タイミング:
害虫発生初期/天敵放飼前後のホットスポット。
手順ステップ:
容器をよく振とうし、計量カップで必要量を取る。
タンクに水を半量入れ薬剤を投入、攪拌後に残りの水を加える。
葉裏まで濡れムラがないよう静圧2.0–3.0 MPaで噴霧。
注意点:
卵には効かないため5–7日後に再散布またはローテーションを検討。
ボルドー液散布後の連用は薬害リスク。
天敵放飼区では直接かからないスポット散布とし、薬液乾燥後24 h経過を目安に放飼可。
Tip:ハウス内相対湿度60 %未満、葉面が乾きやすい条件で速効性が高まる。
5. 関連資材との相乗効果
資材 | 目的 | 使用タイミング |
スパイカルEX(チリカブリダニ剤) | ハダニの長期抑制 | 粘着くん散布後1〜2日 |
バコトップ(タバコカスミカメ剤) | コナジラミ・アザミウマ捕食 | コナジラミ高密度部へ放飼 |
ホリバー イエロー(黄色粘着トラップ) | 成虫飛来のモニタリング | ハウス天井部常設 |
ボルナドファン | 散布液乾燥促進&結露防止 | 散布後30分送風 |
6. FAQ
Q1:収穫中でも本当に使えますか?
A:ラベル上「収穫前日まで使用可」です。乾いた後に成分が残留しにくい物理系薬剤のため、出荷直前のリカバリー散布にも適します。
Q2:卵にも効きますか?
A:作用機構は気門封鎖による窒息効果のため、卵期には効果が及びません。5〜7日後に再散布するか、捕食性天敵を導入して卵・幼虫期を抑制するローテーションが推奨されます。
Q3:他剤との混用はできますか?
A:展着成分を多く含む乳剤や銅剤と混用すると沈殿や薬害リスクが報告されています。原則は単独散布とし、やむを得ず混用する場合は小規模で事前試験を行ってください。
Q4:葉焼けなど薬害の心配は?
A:高温・強日射下で葉面が濡れたまま長時間残ると水滴レンズ効果による褐点が起こることがあります。午前中の散布や送風機併用で速乾させれば薬害はほとんど見られません。
7. まとめ
粘着くん液剤は食品由来・速効性・天敵との高い両立性を兼ね備えたソフト農薬です。ハダニやアブラムシ、コナジラミの発生初期に100倍希釈で葉裏まで丁寧に散布し、薬液乾燥後に天敵を放飼すれば、抵抗性発達を抑えつつ安定したIPM体系を構築できます。収穫直前でも使用できるためリカバリーにも最適。薬剤ローテーションの“つなぎ”に迷ったら、まずは粘着くん液剤を試してみましょう。