最新版・トマトIPM超実践ガイド――4つの重点対策で病害虫をまとめて抑え込む!
- daikihirayama3z
- 5月27日
- 読了時間: 4分
更新日:7月2日

はじめに― なぜ“総合防除”か
農林水産省の新マニュアルは「予防・判断・防除」を組み合わせ、化学農薬への依存を減らしながら経営リスクも下げる“総合防除(IPM)”を推奨しています。ポイントは ①環境づくり ②土壌病害対策 ③害虫の侵入遮断 ④天敵の活用。以下では現場ですぐ実践できる要点だけを抜粋しました。
1.環境づくりと日常管理(予防の基本)
チェック項目 | 具体的な行動 | 効果 |
---|---|---|
換気・風通し | 側窓・天窓をこまめに開閉し湿度を下げる | 灰色かび病・うどんこ病の発生抑制 |
適正な肥培管理 | 窒素過多を避け、生育を“締め気味”に | 病害虫の被害を受けにくい株に |
病葉・残渣の速やかな除去 | 花弁・落果・感染葉はこまめに片付け | 二次感染源を断つ |
健全苗の確保 | ウイルスフリー苗+土壌病害検査 | 初期感染をブロック |
コツ: 作業前後にハサミを次亜塩素酸で消毒し、病害の持ち込み・持ち出しを防ぐ。
2.青枯病・萎凋病に効く"土壌還元消毒"+"抵抗性台木"
2-1. 土壌還元消毒
時期:6~9月上旬、地温30 °C以上を確保できるとき
手順概略
糖蜜吸着資材または糖含有珪藻土を10aあたり約1t散布し、土壌と混和。
灌水チューブ設置→透明フィルムで土壌を被覆。
湛水状態になるまで灌水。
ハウスの開口部を全て閉じて密封状態にする。消毒期間を20日間以上維持。
被覆を剥がし、土壌を乾燥&耕うんで酸素供給。
コスト:10~15万円/10 a
失敗パターン:湛水不足・地温不足→効果激減。必ず温度と水位を毎日確認
2-2. 抵抗性台木の利用
対象:青枯病・萎凋病の侵入阻止
価格感:普通苗の1.5~2倍
ポイント
接合部は地上に来るよう浅植え
湿度と温度を高めに保ち活着促進
土壌還元消毒処理との併用で長期安定
3.害虫の“入口”を塞ぐ防虫ネット(物理的防除)
仕様 | 推奨目合い | 目安コスト* |
---|---|---|
標準白ネット | ≤ 0.4 mm | 約16万円/10 a |
赤色ネット | 0.8 mm | 約12万円/10 a |
*施工費別途
設置のコツ
出入り口は二重カーテンにし“開けっぱなし”を防止
細目ネットはハウス内温度が上がりやすい。換気扇や遮光で温度管理
黄色粘着板・誘殺灯と併用し侵入モニタリング
4.タバココナジラミ対策の切り札「タバコカスミカメ+バンカー植物+天敵のごちそう」
項目 | 推奨値・作業 | 根拠 |
---|---|---|
放飼タイミング | 定植直後に2 週間間隔×2回 | 苗期に定着させるのが鍵 |
放飼量 | トマト2株あたり成虫1頭 | 〃 |
バンカー植物 | バーベナorクレオメ 60 cmプランター/1 a | 〃 |
天敵定着資材 天敵のごちそう | 放飼前に1回 + 放飼10日後に1回 | 〃 |
コスト | 天敵製剤7万円/10 a + バンカー植物約500~1000円/10 a | 〃 |
注意点 | 放飼前に薬剤でコナジラミ密度を下げる/天敵に影響する農薬は使用回避 | 天敵の定着率向上に必須 |
5.IPM早見チェックリスト
□ 健全苗を確保した
□ 側窓・天窓の開閉スケジュールを決めた
□ 0.4 mmネットをすき間なく展張、二重カーテンを確認
□ 土壌還元消毒の準備(資材・地温・人員)完了
□ 接ぎ木苗の接合部が地上に出ている
□ 定植後すぐにバンカー植物を置き、天敵のごちそうを散布して天敵を放飼
□ 湿度・害虫トラップを週1回モニタリング
6. まとめ
4つの対策は単独ではなく組み合わせてこそ最大効果を発揮します。防虫ネットで侵入を抑えつつ、コナジラミが増えない間にタバコカスミカメを定着させ、土壌病害は土壌還元消毒と抵抗性台木でブロック――この“多層防御”がIPMの核心です。地域ごとの発生状況や施設条件で細部は変わるため、最終的な判断は地元普及指導員・JA営農センターの助言を必ず仰いでください。
「予防で7割、判断で2割、防除で1割」――マニュアルの基本精神を頭に入れ、今年こそ病害虫に振り回されないトマト栽培を実現しましょう!