ナスの葉にかすれ模様が出たら注意!原因はハダニ?写真で診断と対策
- 秋介 永田
- 9月10日
- 読了時間: 5分

ハウス・露地のナスで「葉が白くかすれて見える」「クモの巣のような糸が見える」「部分的に褐変して落葉する」──そんな症状は、発生初期のハダニ類(ナミハダニ・カンザワハダニ)であることがよくあります。
放置すると爆発的に増殖し、光合成低下・着果不良・収量減へ。一方、似た症状を出すアザミウマ類やチャノホコリダニもあるため、まずは葉裏の観察で見極めが重要です。
本記事では、写真での診断ポイント、原因候補の比較、IPMに基づく天敵・薬剤・環境調整まで、今日から現場で使える実践策を整理します。
1. 症状チェック|ハダニによる「かすれ模様」の特徴
観察部位 | 初期症状 | 進行症状 | 備考 |
葉(表) | 微細な白点が散在(カスリ状)。遠目では葉脈間が褪色。 | 白色〜褐色化、葉縁の乾燥、多発でクモの巣のような糸。 | ルーペでの観察推奨。 |
葉(裏) | 中肋〜葉脈沿いに微小なダニ(赤〜黄緑)。卵は透明球状。 | 多発でクモの巣のような糸、集団寄生。 | アザミウマは黒い糞点が手掛かり。 |
新梢・生長点 | (チャノホコリダニ時)軽いちぢれ。 | 芯止まり・葉の奇形・テカリ。 | ハダニよりホコリダニ疑い。 |


2. 考えられる原因(病害虫)一覧
病害虫 | 典型症状との一致度 | 発生環境 | 確認ポイント |
ハダニ類(ナミ/カンザワ) | ★★★ | 高温・乾燥の環境条件で急増。 | 葉裏にダニ・卵、クモの巣のような糸。葉表は白いカスリ状。 |
アザミウマ類 | ★★☆ | 高温期、花・新葉に多い。雑草由来も。 | 葉表の銀白色かすれ、黒い糞点。果皮に筋状の傷。 |
チャノホコリダニ | ★★☆ | やや高温多湿~周年。 | 生長点の萎縮・葉のテカリ、がくの傷。 |
3. 対策ガイド
3-1. 緊急措置(24時間以内)
被害葉の選択除去:糸が張るほどの葉は付け根から除去。袋詰め→持ち出し廃棄。
持ち込み源の遮断:圃場周囲の雑草・畦畔を管理(ハダニ・アザミウマの発生源)。
初発スポット処理:発生株周辺の外側から内側へ丁寧に散布(かけ残し防止)。
ミツバチ導入中の注意:訪花昆虫影響の少ない薬剤に限定。
3-2. 環境調整(IPMの基礎)
管理項目 | 目安 | 効果/備考 |
|---|---|---|
温度 | 25–30℃帯で密度上昇に注意 | 高温で世代時間が短縮。過度の高温乾燥を避ける。 |
湿度 | 60–75%を目安 | 低湿だと増殖しやすい。過湿は灰色かび等に注意。換気と潅水のバランス。 |
苗・資材 | 苗検疫・資材の洗浄 | 苗持ち込み・支柱再利用時の残渣での持越し防止。 |
3-3. 生物的防除
推奨天敵:
チリカブリダニ(Phytoseiulus persimilis):ハダニ密度が上がり始めた初期に。6,000頭/10aを目安に放飼、定着を見ながら追放飼。
ミヤコカブリダニ(Neoseiulus californicus):低密度維持・残効。ボトル/パック製剤を2,000–6,000頭/10aを目安に放飼、定着を見ながら追放飼。
併用NG/注意:放飼前後は選択性の低い殺虫・殺ダニ剤を避け、残効期間に配慮。天敵に影響の少ない剤に限定。
3-4. 化学的防除
商品名 | 有効成分 | 代表IRAC | 散布適期・使い分け |
ピラニカEW | テブフェンピラド | 21A | 初発〜増殖初期。速効性。天敵前処理にも(影響はラベル確認)。 |
コロマイト乳剤 | ミルベメクチン | 6 | 収穫期も使いやすい場面多い。天敵影響が比較的少ないとされる。 |
マイトコーネフロアブル | ビフェナゼート | 20D | 密度抑え込み。訪花昆虫影響に注意しつつ選択。 |
カネマイトフロアブル | アセキノシル | 20B | 多発時の叩き。卵〜成虫まで。 |
重要 同一IRACコードの連用禁止。葉裏まで十分量を散布。登録・適用・安全日数は地域・作型で異なるため最新ラベルを必ず確認。
4. 予防と管理のチェックリスト
☐ 定植前:苗の葉裏を点検(卵・ダニ・テカリ)。
☐ 周辺雑草の除去。
☐ 週1回の葉裏サンプリング(下位・中位・上位葉)。
☐ 訪花昆虫・天敵導入カレンダーと薬剤散布履歴の整合。
☐ 散布は早朝/夕方に実施し、葉裏被覆率を記録。
5. 失敗しがちなNG例
同系統(IRAC)を連用して早期耐性化。
天敵放飼直後に広域殺虫剤を散布して定着不良。
かけ残し(葉裏・葉柄付け根)→「効かない」思いこみ過剰散布に陥る。
高温乾燥で再発(環境要因の未管理)。
6. FAQ
Q1. ハダニのかすれ模様、アザミウマとの見分け方は?
A. ハダニは葉裏にダニ・卵・細い糸、葉表は点状の白斑。アザミウマは銀白色の擦過痕+黒い糞点が目印。生長点萎縮やテカリはチャノホコリダニを疑う。
Q2. 水で洗い流すのは有効?
A. 局所的には密度を一時的に下げますが、再発しやすいため薬剤・天敵との併用が基本です。
Q3. 訪花昆虫(マルハナバチなど)導入中でも散布できる?
A. 影響の少ない薬剤に限定し、導入箱の密閉・回収、巣箱被覆、ラベルで安全日数を必ず確認。天敵導入前後は選択性を最優先。
Q4. どの順番でローテーションすれば良い?
A. 例)21A→20B→6→20D→13のようにIRACコードをずらす。初発は速効性(21A/13)、抑え込みに20B/20D、収穫期は6など、作期と密度で使い分け。
7. まとめ
ナスの「かすれ模様」はハダニ類が原因として第一に考えられます。まず葉裏のダニ・卵・糸で同定し、アザミウマ・チャノホコリダニと症状で見分けましょう。
主な対策は、(1)発生源管理と被害葉の除去、(2)IRACコードを切り替える薬剤ローテーションを意識、(3)カブリダニの定着で再発抑制、(4)高温乾燥などの環境要因を整える、の4つを行いましょう。
収穫期の安全性・訪花昆虫・天敵への影響は最新ラベルを確認し、現場の条件に合わせて運用してください。












