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イチゴ灰色かび病ーーイチゴの果実が黒ずむときは注意!イチゴ灰色かび病の診断と対策

更新日:7月4日


収穫を目前にした果実が黒ずみ、灰色の綿毛が広がり始めたら要警戒――イチゴ灰色かび病(Botrytis cinereaは短期間で温室一面に拡大し、収量を大きく落とす代表的病害です。本記事では、症状を素早く見分ける診断フローから 24 時間以内に行う応急措置、湿度・換気を組み合わせた環境制御、そして登録農薬・生物資材まで、現場で即実践できる具体策をまとめました。最後に予防チェックリストも付属。不安を感じたその瞬間から被害抑制へ動き出せます。



2. 症状チェック|果実が黒ずむ灰色かび病の特徴


観察部位

初期症状

進行症状

果実

水浸状の淡褐色斑点。へた周辺から黒ずむ

灰色の胞子粉が果面を覆い、軟化→腐敗→ミイラ化

花弁・萼

花弁に褐色斑、萼片が茶褐色に変色

花房全体が落花せず灰色に枯れ込む

葉柄・葉身

傷口周辺が褐色〜黒褐色

葉柄が枯死し葉が垂れ下がる

ポイント: 灰色かび病は開花期に潜在感染し、収穫期に果実表面へ発症するため花の褐色斑と高湿度が同時に見られたら要注意。20‑25 ℃・相対湿度85%以上で胞子が大量発芽します。

果実
果実
萼の症状
萼の症状

3. 考えられる原因一覧

病害・障害

典型症状との一致度

発生環境

確認ポイント

灰色かび病

★★★

15–25 °C・高湿度

花弁・果実に灰色のかび、柔らかい腐敗

炭疽病

★★☆

25–30 °C・高温多湿

黒色の輪状病斑、硬い病斑

うどんこ病

★★☆

15〜28 ℃・中湿度・弱光

葉・果実に白色粉状のかび、擦ると落ちる

生理障害

★☆☆

長期過湿

胞子なし


参考になる記事(自社サイト内)



4. 対策ガイド


4-1. 緊急措置(24時間以内)


  • 被害果の摘果と密封廃棄:すみやかにビニール袋に入れ即時ハウス外へ。

  • 湿度計チェック:85%を超えていないか確認し、過湿なら換気・送風。

  • 登録農薬の散布例ペンチオピラド水和剤(アフェットフロアブル)希釈2000倍、初発確認後速やかに全面散布。



4-2. 環境調整(IPMの基礎)

管理項目

目安値

効果

温度

21 °C前後

胞子発芽を抑制

湿度

75%以下

灰色かび病の感染リスク低減

風速

0.3m/s 前後(風通しを良くする)

結露の乾燥を促進


4-3. 生物的防除


  • 微生物資材Trichoderma harzianum 製剤(商品例:トリコロジックS )水や栄養剤への添加剤として15~20リットルあたり1gを加える。6~8週間の間隔で使用。

  • 併用NG薬剤:広域殺菌剤(ベンレート水和剤トリフミン水和剤などの DMI 剤に分類される殺菌剤)は拮抗菌を抑制する恐れ。



4-4. 化学的防除

商品名(剤型)

有効成分

希釈倍率

散布適期

ロブラール水和剤

イプロジオン

1500倍

予防〜収穫前日まで

カンタス®︎ドライフロアブル

ボスカリド

1000-1500倍

予防〜収穫前日まで

ファンタジスタ顆粒水和剤

ピリベンカルブ

2000-3000倍

予防〜収穫前日まで

ボトキラー水和剤

バチルス ズブチリス芽胞

150~300ℓ/10a

予防〜発病初期

注意:農薬登録は地域・作型で異なるため、必ず最新ラベル・登録情報を確認してください。





5. 予防と管理のチェックリスト


  • ☐ 定植前に苗トレーを消毒したか。

  • ☐ 花がら・古葉を週1回以上除去したか。

  • ☐ 夜間の湿度ログを取り、85 %超過時に送風機を稼働させたか。

  • ☐ 防虫ネットと換気口で結露水滴が溜まらない設計か。



6. 失敗しがちなNG例


  1. 被害果を廃棄せず通路に放置 → 胞子が温室全体に拡散。

  2. 同一系統の殺菌剤を連用 → 耐性灰色かび病菌が急増。

  3. 夜間加温のみで換気不足 → 結露が長時間残り感染拡大。



7. FAQ


Q1. 灰色かび病は雨よけハウスでも発生しますか?

A. はい。ハウス内で湿度80 %超の結露環境が続けば発生します。開花期の換気と除湿が重要です


Q2. 収穫前日に薬剤散布しても大丈夫?

A. 登録農薬ごとに収穫前日数が定められています。ラベルを必ず確認してください。


Q2. 灰色かび病と炭疽病を同時に防ぐ方法は?

A. 輪作を含めた株間管理・換気強化で共通リスクを低減し、異なる作用点を持つ殺菌剤をローテーションすることで両病への防除効果が高まります。


8. まとめ


灰色かび病は 果実黒ずみ+灰色胞子 という分かりやすい症状を示しますが、感染速度が速く収穫量に直結する厄介な病害です。まずは被害果を徹底除去し、湿度75%以下・適正風速 を保つ環境づくりが肝心。さらに 微生物資材や作用点の異なる殺菌剤のローテーション で耐性リスクを抑えつつ、定期的な花がら除去で発生源を断ちましょう。記事末尾のチェックリストをプリントし、温室入口に掲示することで作業ミスを防ぎ、健全なイチゴを安定出荷できます。



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