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イチゴ萎黄病 ─ イチゴの株が萎れる症状が出たら注意!疑うべきイチゴ萎黄病と今すぐできる対策

更新日:7月4日



イチゴの株が急にしおれ、葉が黄化し始めたら要警戒――それは土壌伝染性のイチゴ萎黄病(Fusarium oxysporum f.sp. fragariaeかもしれません。発症初期を見逃すとクラウンの褐変‐壊死が進行し、株ごと枯死するため、温室全体の収量に大打撃を与えます。本記事では、症状を見極めるチェック表、24時間以内に取るべき緊急措置、IPMに基づく環境調整、生物的・化学的防除の手順、そして再発を防ぐ予防チェックリストを提供。「株が萎れる原因が分からない」「すぐに止めたい」と悩む生産者の方に向け、信頼できる情報だけをまとめました。



2. 症状チェック|イチゴ萎黄病の特徴


観察部位

初期症状

進行症状

新葉が黄緑色になり1~2小葉が小さくなる

ほぼ全葉が黄白化し垂れ下がる

クラウン

目視変化なし

切断すると維管束が褐色~赤褐色に変色

白根が減少

主根が褐色化し腐敗臭

1つの小葉が矮化している症状
1つの小葉が矮化している症状
クラウン部の維管束が変色
クラウン部の維管束が変色

ポイント:

株元(クラウン)を縦割りして維管束の褐色変色を確認するのが決め手。葉が急激に黄化するが、葉柄・葉脈は比較的健全に見える場合が多い。


3. 考えられる原因(病害虫)一覧

病害

典型症状との一致度

発生環境

確認ポイント

イチゴ萎黄病(Fusarium oxysporum f.sp. fragariae)

★★★

25–30 ℃、pH5.5–6.5、連作土壌

クラウン維管束の褐変、根部褐色腐敗

イチゴ萎凋病(Verticillium dahliae)

★★☆

18–24 ℃、冷涼期、やや酸性土壌

葉のV字黄化、クラウン内部はオリーブ褐色

イチゴ炭疽病(Colletotrichum acutatum)

★★☆

高温多湿、灌水過多

根・クラウンの黒褐色萎縮、地上部は急枯



4. 対策ガイド


4-1. 緊急措置(24時間以内)


  • 発病株の抜き取りと焼却または深層埋設(被害根が残ると再感染源)。

  • 株を抜いた穴に0.2 % 次亜塩素酸ナトリウムまたは300倍ベンレート水和剤で土壌表面を点滴潅注し、スコップを同薬液で消毒。

  • ベッド間・歩行路での土壌移動を防ぐためマルチ破れを速やかに補修し、作業導線を制限。


4-2. 環境調整(IPMの基礎)

管理項目

目安値

効果

土壌温度

18–22 ℃

病原菌の増殖抑制

EC

0.7–1.0

高ECによる根傷み低減 → 感染口減

湿度(夜間)

80 %以下

根圏過湿を防ぎ好気状態維持

灌水回数

午前主体・夕方控え

夜間高湿度を避け病勢進行を抑制


4-3. 生物的防除


  • トリコデソイル:育苗期1000倍希釈、定植後250g/10a

  • 併用 NG 薬剤リスト:ベンレート水和剤、スイッチ顆粒水和剤、チルト乳剤など。



4-4. 化学的防除

商品名

有効成分

希釈倍率

散布適期

バスアミド粒剤

ダゾメット

30 kg/10a(全面土壌混和)

定植2週間前

クロルピクリン錠剤

クロルピクリン

1穴あたり1錠

2回以内(但し、床土は1回以内、圃場は1回以内)


注意:

登録内容は地域・作型で異なるため最新ラベルを必ず確認。


5. 予防と管理のチェックリスト


☐ 定植前に抵抗性品種(章姫R、紅ほっぺR等)を選択

☐ 苗検査:苗室で罹病株0 %を確認後導入

定期土壌診断(Fusarium cfu、EC、pHを年2回)

☐ 週1回の葉色・萎れ点検と症状位置を記録

☐ 湿度ログを環境モニターで自動収集し、夜間80 %超は警報設定


6. 失敗しがちなNG例


  1. 連作障害回避策を取らず同ハウスで4年以上栽培 → 土壌中の病原菌密度が指数関数的に増加。

  2. 発病株を圃場内通路に仮置き → 移動時に根土が落ち、他株へ二次感染。

  3. 生物防除資材施用直後にストロビルリン系殺菌剤を散布 → 拮抗菌が定着せず効果が相殺。


7. FAQ


Q1:イチゴ萎黄病と萎凋病はどう見分ける?

A:萎黄病はクラウン内部が赤褐色、主に高温期に発生。萎凋病はクラウンが暗褐色~オリーブ色で冷涼期に発生しやすい。


Q2:発病株を抜いた跡に再定植しても大丈夫?

A:同じ場所への再定植は再発リスクが高い。抜き跡周辺30 cmは消毒・太陽熱処理後、2週間空けてから。


Q3:株元灌注と葉面散布、どちらが効果的?

A:土壌菌寄生型のため灌注または土壌処理が基本。葉面散布は予防効果が限定的。



8. まとめ


イチゴ萎黄病は高温期に土壌から侵入し、クラウン内部を褐変させて株を枯死させます。初期発見→発病株の即時除去→土壌・器具の消毒が被害拡大を止めるカギ。さらに、適温管理と排水性向上、拮抗菌資材の定着、薬剤ローテーションを組み合わせることで長期的に病原菌密度を抑えられます。症状が疑われた時は、本記事のチェック表を活用し、被害が広がる前に緊急措置と環境改善に着手しましょう。




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