イチゴ萎黄病 ─ イチゴの株が萎れる症状が出たら注意!疑うべきイチゴ萎黄病と今すぐできる対策
- 秋介 永田
- 6月16日
- 読了時間: 4分
更新日:7月4日

イチゴの株が急にしおれ、葉が黄化し始めたら要警戒――それは土壌伝染性のイチゴ萎黄病(Fusarium oxysporum f.sp. fragariae)かもしれません。発症初期を見逃すとクラウンの褐変‐壊死が進行し、株ごと枯死するため、温室全体の収量に大打撃を与えます。本記事では、症状を見極めるチェック表、24時間以内に取るべき緊急措置、IPMに基づく環境調整、生物的・化学的防除の手順、そして再発を防ぐ予防チェックリストを提供。「株が萎れる原因が分からない」「すぐに止めたい」と悩む生産者の方に向け、信頼できる情報だけをまとめました。
2. 症状チェック|イチゴ萎黄病の特徴
観察部位 | 初期症状 | 進行症状 |
葉 | 新葉が黄緑色になり1~2小葉が小さくなる | ほぼ全葉が黄白化し垂れ下がる |
クラウン | 目視変化なし | 切断すると維管束が褐色~赤褐色に変色 |
根 | 白根が減少 | 主根が褐色化し腐敗臭 |


ポイント:
株元(クラウン)を縦割りして維管束の褐色変色を確認するのが決め手。葉が急激に黄化するが、葉柄・葉脈は比較的健全に見える場合が多い。
3. 考えられる原因(病害虫)一覧
病害 | 典型症状との一致度 | 発生環境 | 確認ポイント |
---|---|---|---|
イチゴ萎黄病(Fusarium oxysporum f.sp. fragariae) | ★★★ | 25–30 ℃、pH5.5–6.5、連作土壌 | クラウン維管束の褐変、根部褐色腐敗 |
イチゴ萎凋病(Verticillium dahliae) | ★★☆ | 18–24 ℃、冷涼期、やや酸性土壌 | 葉のV字黄化、クラウン内部はオリーブ褐色 |
イチゴ炭疽病(Colletotrichum acutatum) | ★★☆ | 高温多湿、灌水過多 | 根・クラウンの黒褐色萎縮、地上部は急枯 |
4. 対策ガイド
4-1. 緊急措置(24時間以内)
発病株の抜き取りと焼却または深層埋設(被害根が残ると再感染源)。
株を抜いた穴に0.2 % 次亜塩素酸ナトリウムまたは300倍ベンレート水和剤で土壌表面を点滴潅注し、スコップを同薬液で消毒。
ベッド間・歩行路での土壌移動を防ぐためマルチ破れを速やかに補修し、作業導線を制限。
4-2. 環境調整(IPMの基礎)
管理項目 | 目安値 | 効果 |
---|---|---|
土壌温度 | 18–22 ℃ | 病原菌の増殖抑制 |
EC | 0.7–1.0 | 高ECによる根傷み低減 → 感染口減 |
湿度(夜間) | 80 %以下 | 根圏過湿を防ぎ好気状態維持 |
灌水回数 | 午前主体・夕方控え | 夜間高湿度を避け病勢進行を抑制 |
4-3. 生物的防除
トリコデソイル:育苗期1000倍希釈、定植後250g/10a
併用 NG 薬剤リスト:ベンレート水和剤、スイッチ顆粒水和剤、チルト乳剤など。
4-4. 化学的防除
商品名 | 有効成分 | 希釈倍率 | 散布適期 |
---|---|---|---|
バスアミド粒剤 | ダゾメット | 30 kg/10a(全面土壌混和) | 定植2週間前 |
クロルピクリン錠剤 | クロルピクリン | 1穴あたり1錠 | 2回以内(但し、床土は1回以内、圃場は1回以内) |
注意:
登録内容は地域・作型で異なるため最新ラベルを必ず確認。
5. 予防と管理のチェックリスト
☐ 定植前に抵抗性品種(章姫R、紅ほっぺR等)を選択
☐ 苗検査:苗室で罹病株0 %を確認後導入
☐ 定期土壌診断(Fusarium cfu、EC、pHを年2回)
☐ 週1回の葉色・萎れ点検と症状位置を記録
☐ 湿度ログを環境モニターで自動収集し、夜間80 %超は警報設定
6. 失敗しがちなNG例
連作障害回避策を取らず同ハウスで4年以上栽培 → 土壌中の病原菌密度が指数関数的に増加。
発病株を圃場内通路に仮置き → 移動時に根土が落ち、他株へ二次感染。
生物防除資材施用直後にストロビルリン系殺菌剤を散布 → 拮抗菌が定着せず効果が相殺。
7. FAQ
Q1:イチゴ萎黄病と萎凋病はどう見分ける?
A:萎黄病はクラウン内部が赤褐色、主に高温期に発生。萎凋病はクラウンが暗褐色~オリーブ色で冷涼期に発生しやすい。
Q2:発病株を抜いた跡に再定植しても大丈夫?
A:同じ場所への再定植は再発リスクが高い。抜き跡周辺30 cmは消毒・太陽熱処理後、2週間空けてから。
Q3:株元灌注と葉面散布、どちらが効果的?
A:土壌菌寄生型のため灌注または土壌処理が基本。葉面散布は予防効果が限定的。
8. まとめ
イチゴ萎黄病は高温期に土壌から侵入し、クラウン内部を褐変させて株を枯死させます。初期発見→発病株の即時除去→土壌・器具の消毒が被害拡大を止めるカギ。さらに、適温管理と排水性向上、拮抗菌資材の定着、薬剤ローテーションを組み合わせることで長期的に病原菌密度を抑えられます。症状が疑われた時は、本記事のチェック表を活用し、被害が広がる前に緊急措置と環境改善に着手しましょう。