ベンレート水和剤はどうやって使う?─キュウリ、トマト、ナス、ピーマン、イチゴの炭疽病、うどんこ病、灰色カビ病などを防除するベンレート水和剤の使い方を徹底解説!
- 秋介 永田
- 7 日前
- 読了時間: 6分

施設栽培・露地を問わず、灰色かび病、炭疽病、うどんこ病などの病気は収量・品質を大きく低下させます。ベンレート水和剤(有効成分:ベノミル50%)は浸透移行性を持つベンゾイミダゾール系(FRACコード1/MBC)の選択性殺菌剤で、発病初期の治療と予防の両面で使えます。
キュウリやトマト・ナスの灰色かび病・菌核病、ピーマンのうどんこ病、イチゴの炭疽病・萎黄病(灌注・苗根浸漬)などにラベル適用があり、収穫前日まで散布可能(多くの果菜類)など運用しやすいのが特長です。一方、耐性化リスクが高いため同系統の連用は避け、作用機構の異なる薬剤や環境対策と組み合わせることが重要です。
本記事は最新ラベルを踏まえ、希釈倍数・使用液量・時期・回数を作物別に整理し、使い方と注意点をまとめました。
こんな方におすすめ
果菜類の灰色かび病・炭疽病・うどんこ病対策を体系化したい
ベンレート水和剤の希釈倍数や本剤使用回数/成分総使用回数を確認したい
具体的な使い方や収穫前日までの運用を知りたい
1. 商品概要
分類 | 選択性殺菌剤 |
---|---|
主な対象害虫 | 灰色かび病、菌核病、炭疽病、葉かび病、黒星病、(ピーマン)うどんこ病、(イチゴ)萎黄病 等 |
使用場面 | 発病初期~予防、育苗期の灌注、仮植前の苗根浸漬 |
提供形態 | 目安包装:100g・333g・500g・5kg |
2. ベンレート水和剤の特長・メリット
2‑1. ラベル適用が広く、散布・灌注・苗根浸漬まで対応
キュウリ・トマト・ナス・ピーマン・イチゴなど主要果菜類で使用可能。イチゴは炭疽病・萎黄病の苗根浸漬/灌注に対応。
2‑2. 浸透移行性で発病初期の治療+予防に有効
葉内に移行して病斑拡大を抑制。発病初期~直前の処理で効果を最大化。
2‑3. 収穫前日まで散布可(多くの果菜類)で運用しやすい
収穫間隔が短い作型でも使いやすく、防除の穴を作りにくい。
ポイントBOX:(耐性リスク管理)
MBC(FRAC1)は耐性リスクが高い系統。同系統(ベノミル/チオファネートメチル/カルベンダジム)の連続散布は避け、FRACコードの異なる剤(例:7, 9, 11, 12, 17, M系 等)や環境管理湿度・換気・除葉)と組み合わせてください。
3. ベンレート水和剤の使用体系例
病害/作物 | 投入量/時期 | 備考 |
---|---|---|
灰色かび病/トマト・キュウリ・ナス | 開花期~収穫期に発病初期で2000~3000倍を散布 | 送風・除湿と併用し、同系統薬剤との連用避ける |
炭疽病/キュウリ・ピーマン・イチゴ | イチゴ育苗では500倍灌注(50~100mL/株)×最大3回、本圃定植後は500倍100mL/株(収穫30日前まで)、圃場では発病初期散布(2000~3000倍) | 圃場導入時の苗健全化は重要 |
うどんこ病/ピーマン | 初発葉確認~拡大期に2000~3000倍散布 | 硫黄くん煙等との同日重複は避け、別日に行う |
4. ベンレート水和剤の使い方・適切な散布/設置手順
準備物:
ベンレート水和剤、計量スプーン、攪拌棒、噴霧器(必要なら展着剤)。
希釈倍率 or 設置個体数:
薬量を2000~3000倍(散布)、500~1000倍(灌注・苗根浸漬)などラベルの病害・作物別に合わせて水に溶かす。作液は当日使い切り、長時間の放置は避ける。
タイミング:
発病初期~予防期。十分量(100~300L/10a)を葉裏までむらなく散布。
手順ステップ:
所定量まで希釈→よく撹拌→散布/灌注。育苗・定植時は苗根浸漬や株元灌注を実施。
注意点:
MBC系の連用禁止、総使用回数に注意。石灰硫黄合剤や強アルカリ性資材との同時処理は避け、混用はラベル・混用表を必ず確認。ハウス内は送風・除湿で湿度を下げ、罹病葉・残渣の除去で感染源を減らす。
ベンレート水和剤 作物別適用表(作物抜粋)
作物名 | 適用病害名 | 希釈倍数/処理量 | 使用液量 | 使用時期 | 使用回数(内訳) | 成分総使用回数 |
キュウリ | 灰色かび病/菌核病/炭疽病 | 2000~3000倍(散布) | 100~300L/10a | 収穫前日まで | 3回以内(散布) | 4回以内(種子処理含む) |
黒星病/つる枯病 | 2000~3000倍(散布) | 100~300L/10a | 収穫前日まで | 同上 | 同上 | |
つる割病 | 1000倍(灌注)150~300mL/株 | ― | 定植前~定植1か月後 | 灌注3回以内 | 4回以内 | |
トマト | 灰色かび病/葉かび病 | 2000~3000倍(散布) | 100~300L/10a | 収穫前日まで | 5回以内(散布) | 6回以内(種子処理・灌注含む) |
菌核病 | 2000倍(散布) | 100~300L/10a | 収穫前日まで | 5回以内(散布) | 同上 | |
萎凋病(フザリウム) | 1000倍(灌注)150~300mL/株 | ― | 定植前~定植1か月後 | 灌注2回以内 | 6回以内 | |
ナス | 灰色かび病/黒枯病 | 2000~3000倍(散布) | 100~300L/10a | 収穫前日まで | 3回以内(散布) | 4回以内 |
菌核病/褐紋病 | 2000倍(散布) | 100~300L/10a | 収穫前日まで | 同上 | 同上 | |
半身萎凋病 | 500倍(灌注)200~300mL/株 または 1000倍(灌注)400~600mL/株 | ― | 定植後~収穫14日前まで | 灌注3回以内 | 4回以内 | |
ピーマン | うどんこ病 | 2000~3000倍(散布) | 100~300L/10a | 収穫前日まで | 3回以内(散布) | 4回以内 |
斑点病/炭疽病 | 2000~3000倍(散布) | 100~300L/10a | 収穫前日まで | 同上 | 同上 | |
イチゴ | 炭疽病(苗根浸漬) | 500倍/10~30分 苗根浸漬 | ― | 仮植前 | 1回 | 9回以内(散布・灌注等合算) |
炭疽病(育苗期 灌注) | 500倍/50~100mL/株 | ― | 育苗期 最大3回 | 灌注3回以内 | 同上 | |
炭疽病(本圃 灌注) | 500倍/100mL/株 | ― | 定植後~収穫30日前まで | 灌注1回以内 | 同上 | |
萎黄病(各段階の灌注・浸漬) | 500倍(上記と同条件) | ― | 育苗~本圃 | 各内訳どお | 同上 |
Tip:
必ず最新ラベルでご確認ください。上表は対象作物・病害の一部を抜粋整理したものです。
5. 関連資材との相乗効果
資材名 | 目的 | 使用タイミング |
---|---|---|
カンタスドライフロアブル (FRAC 7:SDHI) | ローテーション散布用 (主に灰色かび病・菌核病) | 発病前~発病初期 |
アミスター20フロアブル (FRAC 11:QoI) | ローテーション散布用 (幅広い病害対象) | 予防散布 |
ダイン(展着剤) | 作物への付着性向上で効果up | 薬液作成時混合 |
6. FAQ
Q1:うどんこ病にも効きますか?
A:ピーマンではラベル適用(2000~3000倍散布)があります。キュウリ・トマト・ナス・イチゴではうどんこ病の適用無しです。作物別適用表を必ず確認してください。
Q2:混用はできますか?
A:資材によってはアルカリ性との同時処理で安定性が下がる場合があります。混用時はメーカー混用表/試験で事前確認を。
Q3:耐性が心配です。どう運用すべき?
A:MBC(FRAC1)は耐性リスクが高いため連用しないのが基本。同系統(ベノミル/チオファネートメチル/カルベンダジム)の合算回数や総使用回数に注意し、FRACの異なる系統とローテーションしてください。
Q4:作液を作り置きしても良い?
A:不可。作液は当日作成・当日使い切りが原則。長時間の放置は性能低下の原因になります。
7. まとめ
ベンレート水和剤は、果菜類の灰色かび病・菌核病・炭疽病、イチゴの炭疽病・萎黄病(灌注等)に実用性の高い殺菌剤です。
発病初期対応と環境管理、そしてFRACコードを替えたローテーションが効果と持続性の鍵。最新ラベルを確認し、総使用回数と内訳を守って安全・確実に運用し、病気の発生を抑え、安定した栽培を目指しましょう。