top of page

ゼンターリ顆粒水和剤はどうやって使う? ─ハスモンヨトウ、コナガを防除するBT剤、ゼンターリ顆粒水和剤を徹底解説!

  • 8 時間前
  • 読了時間: 8分

キャベツやはくさい、ブロッコリーなどの葉物野菜を栽培していると、毎年のように悩まされるのがコナガやヨトウムシ(ハスモンヨトウ・シロイチモジヨトウ)といったチョウ目(鱗翅目)害虫です。

「化学合成殺虫剤を連用したら効きが悪くなった」「収穫が近くて使える薬が限られる」「天敵やミツバチへの影響が気になる」——こうした現場の悩みに応えてくれるのが、天然の微生物がつくる殺虫成分を使ったBT剤「ゼンターリ顆粒水和剤」(住友化学/登録第19616号)です。

本剤は収穫前日まで使用でき、有機JAS規格に基づく有機農産物の生産にも使えるうえ、天敵やミツバチへの影響が少ないのが大きな特長で、IPM(総合的病害虫管理)体系の中核として位置づけられます。


この記事では、適用表の数値や作用機構、ローテーション設計、現場でよくある疑問まで、農家さんが実際に役立つ深さで徹底解説します。


こんな方におすすめ

  • キャベツ・はくさい・ブロッコリーなどのコナガ・アオムシ・ヨトウムシに悩んでいる方

  • 化学合成殺虫剤に抵抗性がついてしまい、ローテーションに組み込む別系統の薬剤を探している方

  • 有機栽培・特別栽培に取り組み、収穫前日まで使えて天敵にやさしい殺虫剤を探している方

  • ゼンターリ顆粒水和剤の希釈倍数・使い方・導入事例を知りたい方


1. 商品概要

分類

殺虫剤(生物農薬・BT水和剤)

登録番号

農林水産省登録第19616

種類名

BT水和剤

有効成分

バチルス・チューリンゲンシス(B.t.)菌の生芽胞および産生結晶毒素(BT生菌として10.0%

作用機構コード

IRAC 11A(微生物由来の中腸内膜破壊剤/B.t.由来の殺虫タンパク毒素)

製剤形態

顆粒水和剤(粉立ちが少なく溶けやすい)

主な対象害虫

コナガ、アオムシ、ヨトウムシ、ハスモンヨトウ、シロイチモジヨトウ、オオタバコガ、ハマキムシ類などチョウ目(鱗翅目)害虫

主な使用場面

露地・施設の葉菜類/果樹/茶/いも類・豆類のチョウ目害虫の発生初期。IPM体系・抵抗性管理ローテーションの軸として

製造販売元

住友化学株式会社(家庭園芸向けは住友化学園芸「STゼンターリ顆粒水和剤」)

2. 特長・メリット

2‑1. 化学合成殺虫剤と作用機構が異なり、抵抗性害虫にも効く(IRAC 11A)

有効成分はB.t.菌が産生する結晶性タンパク毒素。害虫が薬剤のかかった葉を食べることで中腸(消化管)の膜が破壊され、摂食を停止して死に至ります(IRAC 11A)。神経系に作用する有機リン・ピレスロイド・ネオニコチノイドなどとはまったく異なる仕組みのため、これらの薬剤に抵抗性がついたコナガやヨトウムシにも高い効果が期待できます。

2‑2. 収穫前日まで使え、成分の使用回数にカウントされない

多くの作物で使用時期が「発生初期、ただし収穫前日まで」と設定されており、収穫間際の防除にも使いやすいのが強みです。さらに本剤は有機JAS適合資材で、化学合成農薬の成分総使用回数にカウントされないため、ローテーションの自由度が高くなります(適用表で各作物の回数表記を必ず確認してください)。

2‑3. 天敵・ミツバチ・マルハナバチへの影響が少なくIPM適合性が高い

BT剤はチョウ目幼虫に特異的に作用するため、カブリダニ類などの天敵、ミツバチ・マルハナバチといった訪花昆虫への影響が少ないとされます。天敵を放飼している施設や、受粉にハチを使うハウスでも組み込みやすく、害虫の異常増殖(リサージェンス)を起こしにくいのもメリットです。

ポイント

BT剤は「食べさせて効かせる」遅効性のため、幼虫が小さい発生初期(若齢幼虫期)に、葉裏までていねいにかけるのが効果を最大化する鍵です。速効性が必要な多発時には、作用機構の異なる化学合成剤(後述)と組み合わせ、密度を下げてから本剤で抑える設計が有効です。



3. 導入例

作物名/作型

投入目的

投入量・時期

期待される効果

露地キャベツ(春・秋作)

定植後のコナガ・アオムシ初発時の密度抑制

1,000〜2,000倍、100〜300L/10a、発生初期〜収穫前日まで

若齢幼虫の摂食停止・密度低下。抵抗性コナガにも有効

はくさい(秋冬どり)

結球前のアオムシ・コナガ・ヨトウムシ対策

2,000倍、100〜300L/10a、発生初期〜収穫前日まで

葉の食害軽減、収穫間際まで使える安心感

施設・露地の野菜類(多くの葉菜)

ハスモンヨトウ・シロイチモジヨトウの初期防除

1,000倍、100〜300L/10a、発生初期〜収穫前日まで

難防除のヨトウ類幼虫を若齢期に抑制

4. 使い方・適切な散布/設置手順

  1. 準備物:

    背負式または動力噴霧器、計量器具、保護具(手袋・マスク)、清浄な水。必要に応じて展着剤(後述)。顆粒水和剤なので粉立ちが少なく溶けやすいですが、よく撹拌してください。


  2. 希釈倍率 or 設置個体数:

    作物・害虫により1,000〜2,000倍(例:キャベツのコナガ・アオムシは1,000〜2,000倍、はくさいは2,000倍、ハスモンヨトウは1,000倍)。必ずラベル記載値を優先してください。


  3. タイミング:

    本剤は遅効性のため幼虫が小さい「発生初期(若齢幼虫期)」が最適。老齢幼虫が増えてからでは効果が出にくくなります。


  4. 手順ステップ:

    計量 → 少量の水で溶かす → 規定量まで加水し撹拌 → 葉表・葉裏までむらなく散布 → 残液はためずに使い切る。


  5. 注意点:

    使用時期(多くは収穫前日まで)と使用回数はラベルに従う。食べて効く剤なので、散布後すぐの効果(ノックダウン)は期待しないこと。アルカリ性資材との混用は避けるのが無難。直射日光・高温で活性が落ちやすいので夕方など涼しい時間帯の散布が望ましい。


作物別適用表(FAMIC農薬登録情報提供システム調査結果ベース)

作物名

適用害虫名

希釈倍数

使用液量

使用時期

キャベツ

アオムシ

1,000〜2,000倍

100〜300L/10a

発生初期 但し収穫前日まで

キャベツ

コナガ

1,000〜2,000倍

100〜300L/10a

発生初期 但し収穫前日まで

キャベツ

ハスモンヨトウ

1,000倍

100〜300L/10a

発生初期 但し収穫前日まで

キャベツ

オオタバコガ/シロイチモジヨトウ

1,000倍

100〜300L/10a

発生初期 但し収穫前日まで

はくさい

アオムシ/コナガ/ヨトウムシ

2,000倍

100〜300L/10a

発生初期 但し収穫前日まで

野菜類(キャベツ、はくさいを除く)

アオムシ/コナガ/ヨトウムシ

1,000〜2,000倍

100〜300L/10a

発生初期 但し収穫前日まで

野菜類(キャベツ、はくさいを除く)

ハスモンヨトウ/シロイチモジヨトウ/オオタバコガ

1,000倍

100〜300L/10a

発生初期 但し収穫前日まで

いも類/豆類(種実)

ハスモンヨトウ

1,000倍

100〜300L/10a

発生初期 但し収穫前日まで

うり科野菜類

ウリノメイガ

1,000倍

100〜300L/10a

発生初期 但し収穫前日まで

トマト/ミニトマト

トマトキバガ

1,000倍

100〜300L/10a

発生初期 但し収穫前日まで

果樹類

ハマキムシ類

1,000倍

200〜700L/10a

発生初期 但し収穫前日まで

チャノコカクモンハマキ/チャハマキ/ヨモギエダシャク

1,000倍

200〜400L/10a

発生初期 但し摘採7日前まで


Tip

BT剤は紫外線で分解されやすいため、曇天や夕方の散布、そして葉裏処理が効果を高めます。散布後しばらく雨が予想される場合は避け、必要に応じて展着剤で付着・耐雨性を補います。


5. 関連資材との相乗効果

商品名

ゼンターリ顆粒水和剤との使い分け・組み合わせ目的

プレオフロアブル

ゼンターリ顆粒水和剤とは効き方が違う薬剤です。コナガやヨトウムシ類が増えてきたときに、ローテーション剤として使いやすいです。

ディアナSC

ヨトウムシ類やアザミウマにも使いやすい薬剤です。ゼンターリ顆粒水和剤だけで抑えきれない場合や、別系統に切り替えたいときの候補になります。

フェニックス顆粒水和剤

チョウ目幼虫に効果が期待できる薬剤です。ゼンターリ顆粒水和剤とは系統が違うため、抵抗性対策のローテーションに使えます。

アファーム乳剤

ヨトウムシ、コナガ、ハモグリバエ類などに幅広く使いやすい薬剤です。発生初期に、ゼンターリ顆粒水和剤とは別の選択肢として使えます。

アビオン-E

薬液を葉に付きやすくし、流れにくくする展着剤です。ゼンターリ顆粒水和剤と混用することで、葉への付着性や耐雨性を高めたいときに使います。


6. FAQ

Q1:ゼンターリ顆粒水和剤はキャベツのコナガに何回まで使えますか?

A本剤は有機JAS適合のBT剤で、多くの作物で化学合成農薬の成分使用回数にカウントされず、収穫前日まで使用できる設定です。ただし作物ごとに回数表記が異なる場合があるため、必ず最新ラベル・FAMICで使用回数と使用時期を確認してください。

Q2:ミツバチ・マルハナバチや天敵カブリダニとの併用は大丈夫ですか?

ABT剤はチョウ目幼虫に特異的に作用するため、ミツバチ・マルハナバチ・天敵類への影響は少ないとされ、受粉用ハチを使うハウスや天敵放飼ほ場でも組み込みやすい資材です。とはいえ放飼直後の直接散布は避け、メーカー公式の影響情報を確認のうえ使用してください。

Q3他の薬剤や展着剤と混用できますか?

A一般にアルカリ性資材(石灰硫黄合剤・ボルドー液など)との混用は避けるのが無難です。展着剤(アビオン-Eなど)との混用は付着・耐雨性を高める目的で行われますが、混用可否は必ずメーカーの混用事例表で確認してください。

Q4:抵抗性が発達したと感じます。どうローテーションすればいいですか?

ABT剤自体が化学合成剤と作用機構が異なるため抵抗性管理の軸になりますが、BTの連用も避け、ディアナSC(IRAC 5)・フェニックス顆粒水和剤(28)・アファーム乳剤(6)など系統の異なる剤と交互に使うのが基本です。

Q5:効果が出にくいときに見直すべきポイントは?

A(1) 散布が遅く老齢幼虫になっていないか(若齢期に散布)、(2) 葉裏まで薬液がかかっているか、(3) 真昼の高温・強い直射日光下で散布していないか(夕方推奨)、(4) 希釈倍数・水量が適正か、(5) 散布後すぐの降雨で流亡していないか——を見直してください。BT剤は「食べさせて効かせる」遅効性のため、即効を期待しすぎないことも大切です。

7. まとめ


ゼンターリ顆粒水和剤は、B.t.菌由来の殺虫タンパク毒素でコナガ・アオムシ・ヨトウムシなどチョウ目害虫を防除するBT剤(IRAC 11A)です。

化学合成剤と作用機構が異なるため抵抗性害虫にも有効収穫前日まで使え、有機JASにも対応天敵やミツバチへの影響が少ない——という三拍子そろったIPMの主力資材です。


若齢幼虫期に葉裏までていねいに散布し、系統の異なる剤とローテーションするのが成功のコツです。


アセット 68.png
最新記事
​カテゴリー
タグ

 © 2023 bioEgg Inc.

bottom of page