オマイト水和剤はどうやって使う?─りんご、ぶどう、みかん、もも、オウトウのハダニ、サビダニを広く防除するオマイト水和剤の使い方を徹底解説!
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果樹のハダニ防除では、ピリダベン・テブフェンピラド・アセキノシル等の単一作用機構剤の連用で抵抗性ハダニが出てしまい、防除が効かなくなる現場が増えています。
オマイト水和剤は、亜硫酸エステル系(プロパルジット/BPPS、IRACコード12C:ミトコンドリアATP合成酵素阻害剤)の殺ダニ剤で、他系統で抵抗性が発達したナミハダニ・カンザワハダニ・ミカンハダニ・リンゴハダニ等の各種抵抗性ハダニにも高い効果を示し、効果持続性に優れる「ハダニローテーションの基幹剤」として古くから現場で重宝されています。
みかん・かんきつではサビダニにも適用があり、小粒種ぶどうではうどんこ病にも登録されています。本記事ではFAMIC農薬登録情報提供システム・日本農薬公式情報をもとに、オマイト水和剤の有効成分・果樹別の希釈倍数・使用時期・回数、IRACローテーション設計、現場でよくあるFAQまで徹底解説します。
注意:以下の内容は2026年5月時点で公開されている情報をもとにまとめたものです。実際に使用される際は必ず最新のオマイト水和剤のラベル・農林水産省「農薬登録情報提供システム」(https://pesticide.maff.go.jp/ )・日本農薬公式情報をご確認ください。
こんな方におすすめ
りんご・もも・おうとう・ぶどう・かんきつ等の果樹で抵抗性ハダニに悩んでいる方
みかん・かんきつのサビダニ(ミカンサビダニ)を同時に防除したい方
オマイト水和剤の希釈倍数・収穫前日数・使用回数を作物別に整理して把握したい方
1. 商品概要
項目 | 内容 |
分類 | 殺ダニ剤(亜硫酸エステル系/プロパルジット製剤) |
種類名 | BPPS水和剤(プロパルジット水和剤) |
登録番号 | 第8202号(日農オマイト水和剤) |
有効成分 | BPPS(プロパルジット) 30.0% |
作用機構コード | IRAC 12C(ミトコンドリア複合体V/ATP合成酵素阻害) |
製剤形態 | 水和剤(類白色粉末、45μm以下) |
主な対象害虫 | ハダニ類、サビダニ類、カンザワハダニ(+小粒種ぶどううどんこ病) |
主な使用場面 | 果樹(りんご、もも、すもも、おうとう、みかん、かんきつ、ぶどう) |
製造販売元 | 日本農薬株式会社 |
2. 特長・メリット
2‑1. 抵抗性ハダニに強い「単独IRACグループ」の殺ダニ剤
オマイト水和剤の有効成分であるBPPS(プロパルジット)は、他の多くのハダニ剤とは異なる効き方をする殺ダニ剤です。
ピリダベン、テブフェンピラド、アセキノシル、ミルベメクチン、シエノピラフェンなどとは作用の仕組みが違うため、これらの薬剤で効きにくくなったハダニにも効果が期待できます。
そのため、同じ系統の薬剤を続けて使うのではなく、防除ローテーションの中にオマイト水和剤を1回組み込むことで、ハダニの抵抗性対策として役立ちます。
2‑2. ハダニの幅広いステージに効き、効果持続性に優れる
主にハダニの幼虫・若虫・成虫に対して接触的に効果を示し、効果の持続性に優れます。
ナミハダニ・カンザワハダニ・リンゴハダニ・ミカンハダニ等、ハダニ「類」として広く適用があるため、種の同定が難しい現場でも使いやすい薬剤です。
みかん・かんきつではサビダニ類(ミカンサビダニ)にも登録があり、ハダニ+サビダニを1剤で同時防除できます。
2‑3. 天敵カブリダニへの影響と注意点
BPPSは天敵カブリダニ類(チリカブリダニ・ミヤコカブリダニ等)への影響があることが知られており、IPM体系で天敵を活用している園では放飼時期と散布時期の時間的・空間的すみ分けが必要です。最新のメーカー影響表で残効期間を必ず確認してください。
蚕に対して影響があるため、周辺の桑葉にかからないよう注意。
ボルドー液、その他のアルカリ性の強い薬剤との混用は避けるのが原則。
ポイント
ハダニ防除では、同じ系統の薬剤を続けて使わないことが大切です。
薬剤にはそれぞれ「効き方の違い」があり、IRACコードで分類されています。そのため、例えば以下のように、IRACコードが異なる薬剤を順番に使うことで、ハダニが薬剤に慣れて効きにくくなる「抵抗性」の発達を抑えやすくなります。
オマイト水和剤(12C)→ スターマイトフロアブル(25A)→ コロマイト乳剤(6)→ サンマイト水和剤(21A)→ カネマイトフロアブル(20B)
このように、作用の異なる薬剤をローテーションで使うことが、ハダニ防除を長く安定させるための基本です。
3. 導入例
作物名/作型 | 投入目的 | 投入量・時期 | 期待される効果 |
りんご(露地) | 夏期のリンゴハダニ・ナミハダニ・カンザワハダニの密度抑制 | 750倍、200〜700L/10a、収穫3日前まで、本剤1回・BPPS総使用1回 | 他剤で抵抗性が出た夏ハダニのリセット剤として活用 |
みかん・かんきつ | ミカンハダニ+ミカンサビダニの同時防除 | 750倍、200〜700L/10a、みかん収穫7日前まで/かんきつ(みかんを除く)収穫14日前まで、本剤2回以内 | ハダニとサビダニを1剤で同時にコントロール |
小粒種ぶどう(デラウェア等) | カンザワハダニ+うどんこ病の同時防除 | 1000倍、200〜700L/10a、収穫21日前まで、本剤1回 | 梅雨明け以降のハダニ多発期と早期うどんこ病をカバー |
もも・すもも | 夏期のナミハダニ・カンザワハダニの密度抑制 | 750倍、もも収穫21日前まで(本剤2回以内)/すもも収穫7日前まで(本剤1回) | 抵抗性ハダニのリセットを兼ねた基幹散布 |
おうとう | 収穫後〜落葉期のハダニ密度低下 | 750倍、200〜700L/10a、収穫後〜落葉期、本剤2回以内 | 翌年への越冬密度を下げ、翌春の発生を抑制 |
※適用表と一般的な防除暦をもとにした典型的な使用シナリオです。
4. 使い方・適切な散布/設置手順
準備物:
動力噴霧器(スピードスプレーヤー含む)、計量カップ、攪拌棒、保護眼鏡・農薬用マスク・手袋(眼への刺激性が強いため必須)、必要に応じてダイン等の展着剤(メーカー混用事例で要確認)。
希釈倍率 or 設置個体数:
りんご・かんきつ・もも・すもも・おうとう=750倍、小粒種・大粒種ぶどう=1000倍。使用液量は果樹で200〜700L/10a。
タイミング:
ハダニは発生初期(葉あたり数頭程度)の段階で散布するのが鉄則。密度が爆発してからでは効果が出にくくなります。みかんではサビダニ初発を兼ねて梅雨明け前後が一つの目安。
手順ステップ:
①所定量の薬剤に少量の水を加えてのり状にねった後、さらに所定量の水を加え、よくかきまぜて散布液を調製 。
②葉裏のハダニ生息部位まで確実に到達するよう散布 。
③散布後は噴霧器内を十分に水洗し、洗浄水は河川等に流さない 。
④空袋は水産動植物に影響を与えないよう適切に処理。
注意点:
収穫前日数の厳守(りんご3日/みかん7日/かんきつ14日/ぶどう小粒種21日/大粒種14日/もも21日/すもも7日/おうとうは収穫後散布)。
本剤の使用回数(りんご・小粒種・大粒種ぶどう・すもも:1回/みかん・かんきつ・もも・おうとう:2回以内)。
BPPSの総使用回数も同じ回数で管理。
かんきつには、新葉(芽)に薬害を生ずるおそれがあるので、幼木では新芽の生育期間、成木では春芽が硬化するまでの期間は使用を避ける。
果実の肥大期〜着色初期の散布は着色むらを生ずることがあるので、この時期の使用は避ける。
りんご、もも、おうとう、ぶどうには、樹勢の弱っている園、旱ばつ状態の園、梅雨期および曇天多雨の続いた後は使用をさける。
アルカリ性薬剤(ボルドー液、石灰硫黄合剤等)との混用回避。
作物別適用表(FAMIC農薬登録情報提供システム調査結果ベース/2022年8月3日現在の登録内容)
※ 下表は調査時点の公開情報を整理したものです。最新の使用基準は必ずオマイト水和剤のラベル/FAMIC「農薬登録情報提供システム」(https://pesticide.maff.go.jp/)でご確認ください。
作物名 | 適用害虫名/病害名 | 希釈倍数 | 使用液量 | 使用時期 | 本剤使用回数 | BPPS総使用回数
|
りんご | ハダニ類 | 750倍 | 200〜700L/10a | 収穫3日前まで | 1回 | 1回 |
みかん | ハダニ類/サビダニ類 | 750倍 | 200〜700L/10a | 収穫7日前まで | 2回以内 | 2回以内 |
かんきつ(みかんを除く) | ハダニ類/サビダニ類 | 750倍 | 200〜700L/10a | 収穫14日前まで | 2回以内 | 2回以内 |
小粒種ぶどう | カンザワハダニ/うどんこ病 | 1000倍 | 200〜700L/10a | 収穫21日前まで | 1回 | 1回 |
大粒種ぶどう | カンザワハダニ/うどんこ病 | 1000倍 | 200〜700L/10a | 収穫14日前まで | 1回 | 1回 |
もも | ハダニ類 | 750倍 | 200〜700L/10a | 収穫21日前まで | 2回以内 | 2回以内 |
すもも | ハダニ類 | 750倍 | 200〜700L/10a | 収穫7日前まで | 1回 | 1回 |
おうとう | ハダニ類 | 750倍 | 200〜700L/10a | 収穫後〜落葉期 | 2回以内 | 2回以内 |
5. 関連資材との相乗効果
商品名 | 組み合わせ目的 |
カネマイトフロアブル | 幼虫〜成虫まで幅広く効果が期待できるため、オマイト水和剤の後に追加防除したいときの候補になります。 |
コロマイト乳剤 | 速効性が期待できるため、ハダニが増え始めたときに、オマイト水和剤と切り替えて使いやすい薬剤です。 |
スターマイトフロアブル | 卵〜成虫まで幅広く効果が期待できるため、ハダニの増加をしっかり抑えたいときのローテーション候補になります。 |
ダニサラバフロアブル | 天敵カブリダニへの影響が比較的小さいとされるため、天敵を使っている圃場で、オマイト水和剤と使い分ける候補になります。 |
6. FAQ
Q1:オマイト水和剤はりんごのハダニに何回まで使えますか?
A:りんごでは750倍希釈・収穫3日前まで・本剤1回・BPPS総使用回数1回です。年1回しか使えませんので、ローテーションの中で「ここぞ」というタイミングで投入してください。
Q2:オマイト水和剤は天敵カブリダニ(チリカブリダニ・ミヤコカブリダニ等)に影響しますか?
A:BPPSは天敵カブリダニ類に影響することが知られています。果樹IPMで天敵を活用している園では、天敵放飼前の使用や、放飼前後の散布は避けてください。最新のメーカー公開のカブリダニ影響表で残効日数を必ず確認してください。なお、ミツバチ・マルハナバチへの影響は殺ダニ剤としては比較的限定的ですが、訪花期の散布は避けるのが安全です。
Q3:オマイト水和剤と他剤(殺虫剤・展着剤・銅剤)は混用できますか?
A:多くの殺虫剤・殺菌剤・展着剤と混用可能ですが、ボルドー液・石灰硫黄合剤などアルカリ性の強い薬剤との混用は避けるのがメーカー指示です。詳細は日本農薬の混用事例表で必ず事前確認してください。
Q4:抵抗性ハダニが出てきたと感じます。どうローテーションすればいいですか?
A:IRAC(殺虫剤抵抗性対策委員会)の推奨は「同一IRACグループの薬剤を年1回(最大2回)に抑え、世代ごとに作用機構の異なる薬剤を使う」こと。オマイト(IRAC 12C)→ サンマイト水和剤(21A)→ スターマイトフロアブル(25A)→ カネマイトフロアブル(20B)→ コロマイト乳剤(6)といった具合に作用点をぐるりと回すと、各剤の有効寿命を長く保てます。
Q5:効果が出にくいときに見直すべきポイントは?
A:①散布タイミングが遅すぎないか(密度が爆発してからでは効きにくい)、②葉裏まで薬液が届いているか(ハダニは葉裏中心)、③水量・走行速度・ノズル圧がスピードスプレーヤーでは特に重要、④調製時にのり状にしてから希釈しているか(粉末の分散が悪いと効きにムラが出る)、⑤同一IRACの薬剤を連用していないかを順に確認してください。
7. まとめ
オマイト水和剤は、BPPS(プロパルジット/IRAC 12C)を有効成分とする殺ダニ剤で、抵抗性ハダニにも高い効果を示し、効果持続性に優れる「ハダニローテーションの基幹剤」です。
りんご・もも・すもも・おうとう・みかん・かんきつ・ぶどうの果樹で、ハダニとサビダニを同時防除でき、IPM体系における基幹殺ダニ剤として確固たる地位を持っています。
ただし使用回数(多くの果樹で年1〜2回)と新葉・果実肥大期・樹勢低下園での使用回避、アルカリ性薬剤との混用回避を守り、IRAC 21A・25A・20B・6剤との確実なローテーションを組むことが、抵抗性発達を防ぎつつ高い効果を維持する鍵です。












