モスピラン液剤はどうやって使う?─トマト、なす、きゅうり、キャベツ、はくさいなどのアブラムシ類、アオムシを防除するモスピラン液剤の使い方を徹底解説!
- 6月4日
- 読了時間: 9分

露地・施設を問わず、果菜類でも葉物でも、防除を一度怠れば瞬く間に密度を高めてしまうのがアブラムシ類とアオムシ。
ウイルス病の媒介や直接的な吸汁・食害だけでなく、すす病やべたつきによる商品価値の低下まで引き起こします。
モスピラン液剤は、日本曹達が開発したネオニコチノイド系殺虫剤アセタミプリドを有効成分とする液剤で、少ない散布回数でアブラムシ・アオムシをしっかり叩ける定番剤です。
本記事では、希釈倍数・使用時期・ローテーション設計まで、FAMIC公式情報をもとに徹底解説します。
注意:以下の内容は2026年5月時点で公開されている情報をもとにまとめたものです。実際に使用される際は必ず最新のモスピラン液剤のラベル・農林水産省「農薬登録情報提供システム」・メーカー公式情報をご確認ください。本記事は「モスピラン液剤(登録番号:第20102号/日本曹達株式会社)」を中心に解説します。同じアセタミプリド系には「モスピラン水溶剤」「モスピランSL液剤」「モスピラン顆粒水溶剤」「モスピラン粒剤」「日農モスピランSL液剤」などがあり、適用作物・濃度が異なるため商品名を必ず確認してください。
こんな方におすすめ
果菜類・葉物のアブラムシ類で困っている方
キャベツ・はくさいのアオムシ防除でローテーション資材を増やしたい方
ネオニコチノイドの正しい使用回数・収穫前日数を知りたい方
ミツバチ・マルハナバチへの配慮方法を確認したい方
1. 商品概要
分類 | 殺虫剤(ネオニコチノイド系液剤) |
登録番号 | 第20102号 |
有効成分 | アセタミプリド 2.0% |
作用機構コード | IRAC 4A(ネオニコチノイド系/nAChR競合的修飾剤) |
製剤形態 | 液剤(青色澄明液体) |
主な対象害虫 | アブラムシ類、アオムシ、カキノヘタムシガ、ツツジグンバイ、チャドクガ |
主な使用場面 | 果菜類・葉菜類・果樹・花き類のアブラムシ・アオムシ防除(散布) |
製造販売元 | 日本曹達株式会社 |
毒性 | 普通物(毒劇物に該当しない) |
2. 特長・メリット
2‑1. ネオニコチノイド系(IRAC 4A)による浸透移行性と長い残効
有効成分アセタミプリドは浸透移行性に優れ、葉裏や新葉に潜むアブラムシ・コナジラミ類にも作用します。シナプス後膜のnAChR(ニコチン性アセチルコリン受容体)に作用して虫を麻痺させる、有機リン剤・カーバメート剤に抵抗性を示す系統にも効くのが特長です。速効性と残効性を両立し、アブラムシ類なら1回散布で2〜3週間の密度抑制が期待できます(発生状況・気温による)。
2‑2. 果菜類で「収穫前日まで」使用できる柔軟性
トマト・なす・きゅうりは収穫前日まで使用可能、本剤使用回数3回以内。出荷直前のスポット防除に強い味方となります(粒剤を含む総使用回数の上限あり、要ラベル確認)。キャベツのアオムシは収穫7日前まで、5回以内使用可能。チョウ目害虫防除のレパートリーとしても貴重。
2‑3. ミツバチ・マルハナバチへの注意
ネオニコチノイドはミツバチ・マルハナバチ等の訪花昆虫に強い影響を及ぼすため、放飼期間中の使用は絶対に避けてください。露地栽培でも周辺で養蜂が行われている場合は、関係機関へ事前連絡を行うのが基本です。施設栽培でマルハナバチ受粉を併用する場合、放飼の最低1〜2週間前までに散布を済ませる、または別系統剤(BT剤・IRAC 9系剤等)に切り替える運用が推奨されます。
ポイント
アセタミプリドは同じネオニコチノイドの中でも比較的訪花昆虫への影響期間が短いと言われますが、油断は禁物です。各メーカー公開の「天敵・受粉昆虫影響期間表」を必ず確認しましょう。
3. 導入例
作物名/作型 | 投入目的 | 投入量・時期 | 期待される効果 |
施設栽培トマト(半促成) | 春先のアブラムシ初発時の密度急減 | 500倍希釈、100〜300L/10a、収穫前日まで、本剤3回以内 | 2〜3週間の残効でアブラムシ密度を抑制、ウイルス病媒介リスクを低減 |
露地キャベツ(夏秋どり) | 結球前のアオムシ(モンシロチョウ幼虫)防除 | 250倍希釈、100〜300L/10a、収穫7日前まで、本剤5回以内(散布+粒剤+株元処理を合計6回以内) | 結球期の食害被害を抑え、外葉品質を維持 |
4. 使い方・適切な散布/設置手順
準備物:
背負動力散布機または乗用ブームスプレーヤー、計量カップ、農薬用マスク、不浸透性手袋、長袖・長ズボン、長靴、保護メガネ。
希釈倍率 or 設置個体数:
アブラムシ類(トマト・なす・きゅうり・うめ・かんきつ・かき・きく・ばら・ペチュニア・ゆり・いぬまき):500倍希釈
アオムシ(はくさい・キャベツ):250倍希釈
ツツジグンバイ・カキノヘタムシガ:500倍希釈
チャドクガ(つばき類):250倍希釈
タイミング:
アブラムシは初発時から有翅虫飛来直後がベストタイミング。アオムシは若齢幼虫期(1〜3齢)に処理することで効果と省薬量を両立。発生してから日数が経過した老齢幼虫には効果が落ちることがあります。
手順ステップ:
1)水を入れる→(2)規定量のモスピラン液剤を加える→(3)よく撹拌→(4)葉裏を中心に均一散布→(5)残液は希釈して圃場に処分(用排水路に流さない)。
注意点:
収穫前日数を厳守(トマト・なす・きゅうり:前日まで/キャベツ:7日前まで/はくさい:14日前まで/かんきつ:14日前まで)。
本剤使用回数とアセタミプリドの総使用回数(粒剤+散布+くん煙+株元散布の合計)に注意。例:きゅうりは粒剤の定植時までの処理1回以内、2%粒剤の定植後の株元散布1回以内、散布・くん煙・1%粒剤の株元散布は合計3回以内、総5回以内。
ミツバチ・マルハナバチへの影響を避けること(巣箱・通飛経路への飛散注意)。
適用作物群に属する作物または新品種に初めて使用する場合は事前に薬害確認を。
Tip:
アブラムシ初発を見逃さないために、施設では黄色粘着トラップを設置して有翅虫の飛来をモニタリングし、確認後ただちにモスピラン液剤+必要なら別系統剤を投入するのが理想的です。
作物別適用表(FAMIC農薬登録情報提供システム調査結果ベース/モスピラン液剤=第20102号)
作物名 | 適用害虫名 | 希釈倍数 | 使用液量 | 使用時期 | 本剤使用回数 | 使用方法 |
トマト | アブラムシ類 | 500倍 | 100〜300L/10a | 収穫前日まで | 3回以内 | 散布 |
なす | アブラムシ類 | 500倍 | 100〜300L/10a | 収穫前日まで | 3回以内 | 散布 |
きゅうり | アブラムシ類 | 500倍 | 100〜300L/10a | 収穫前日まで | 3回以内 | 散布 |
はくさい | アオムシ | 250倍 | 100〜300L/10a | 収穫14日前まで | 3回以内 | 散布 |
キャベツ | アオムシ | 250倍 | 100〜300L/10a | 収穫7日前まで | 5回以内 | 散布 |
かき | カキノヘタムシガ | 500倍 | 200〜700L/10a | 収穫前日まで | 3回以内 | 散布 |
うめ | アブラムシ類 | 500倍 | 200〜700L/10a | 収穫前日まで | 3回以内 | 散布 |
かんきつ | アブラムシ類 | 500倍 | 200〜700L/10a | 収穫14日前まで | 3回以内 | 散布 |
きく | アブラムシ類 | 500倍 | 100〜300L/10a | 発生初期 | 5回以内 | 散布 |
ばら | アブラムシ類 | 500倍 | 100〜300L/10a | 発生初期 | 5回以内 | 散布 |
ペチュニア | アブラムシ類 | 500倍 | 100〜300L/10a | 発生初期 | 5回以内 | 散布 |
ゆり | アブラムシ類 | 500倍 | 100〜300L/10a | 発生初期 | 5回以内 | 散布 |
つつじ類 | ツツジグンバイ | 500倍 | 200〜700L/10a | 発生初期 | 5回以内 | 散布 |
つばき類 | チャドクガ | 250倍 | 200〜700L/10a | 発生初期 | 5回以内 | 散布 |
いぬまき | アブラムシ類 | 500倍 | 200〜700L/10a | 発生初期 | 5回以内 | 散布 |
5. 関連資材との相乗効果
商品名 | モスピラン液剤との使い分け・組み合わせ目的 |
チェス顆粒水和剤 | アブラムシ対策に使いやすい薬剤です。モスピラン液剤とは効き方が違うため、モスピラン使用後のローテーションに使えます。 |
ウララDF | アブラムシの密度を下げたいときに使いやすい薬剤です。モスピラン液剤とは別系統なので、同じ系統の連用を避けたいときの候補になります。 |
コルト顆粒水和剤 | アブラムシ・コナジラミ・カメムシ対策に使いやすい薬剤です。天敵への影響も比較的小さいため、施設栽培で天敵と組み合わせたい場面にも向いています。 |
アルバリン顆粒水溶剤 | アブラムシ・コナジラミ・カメムシなどに幅広く使える薬剤です。ただし、モスピラン液剤と同じネオニコチノイド系のため、連用は避け、代替候補として使うのが基本です。 |
ゼンターリ顆粒水和剤 | アオムシ・コナガなどのチョウ目幼虫対策に使いやすいBT剤です。モスピラン液剤とは対象害虫・効き方が違うため、イモムシ類が出たときのローテーション候補になります。 |
6. FAQ
Q1:モスピラン液剤はトマトのアブラムシに何回まで使えますか?
A:トマトでのアブラムシ類防除としては、本剤の使用回数3回以内、アセタミプリドを含む農薬の総使用回数は4回以内(粒剤の定植時までの処理は1回以内、散布・くん煙および定植後の株元散布は合計3回以内)です。収穫前日まで使用可能ですが、ローテーションの観点からも年3回以内に抑えるのが推奨されます。
Q2:モスピラン液剤はミツバチ・マルハナバチや天敵カブリダニとの併用は大丈夫ですか?
A:ネオニコチノイド系であるため、ミツバチ・マルハナバチへの影響は明確にあります。施設栽培でマルハナバチを訪花させる場合は、放飼1〜2週間前までに散布を済ませる、または散布後一定期間は別の代替訪花昆虫に切り替える運用が必要です。チリカブリダニ・スワルスキーカブリダニなどの天敵カブリダニへの影響は比較的小さいとされますが、メーカー公開の影響期間表を必ず確認してください。
Q3:モスピラン液剤と展着剤・他剤は混用できますか?
A:一般的に中性〜弱酸性の登録農薬・展着剤(アビオン-E、ダイン、まくぴか等)との混用は可能とされますが、アルカリ性資材(ボルドー液・石灰硫黄合剤など)との混用は分解の恐れがあり推奨されません。メーカー公開の混用事例表で個別に確認してください。展着剤を加えると葉面への付着・浸達性が向上し、効果が安定します。
Q4:アセタミプリドへの抵抗性アブラムシが出てきた感じがします。どうローテーションすればいいですか?
A:同じネオニコチノイド系(IRAC 4A:ジノテフラン、クロチアニジン、イミダクロプリド等)への切替は抵抗性管理の意味では効果が薄いです。作用機構コードが異なる剤への切替が基本で、例えばチェス顆粒水和剤(ピメトロジン/IRAC 9B)、ウララDF(フロニカミド/IRAC 29)、コルト顆粒水和剤(ピリフルキナゾン/IRAC 9B)などへ。施設栽培ではバンカープランツや天敵製剤(コレマンアブラバチ製剤など)の併用も検討してください。
Q5:効果が出にくいときに見直すべきポイントは?
A:散布タイミング(アブラムシは発生初期、アオムシは若齢期)、葉裏処理の徹底(アブラムシは葉裏に多い)、水量と均一性(10aあたり100〜300L、株全体にむらなく)、展着剤の有無、抵抗性個体群の出現を確認してください。発生初期を逃すと密度が急増して薬剤効果が見かけ上低下します。
7. まとめ
モスピラン液剤はネオニコチノイド系アセタミプリドを2.0%含有する液剤で、アブラムシ類・アオムシを中心に幅広い果菜・葉物・果樹・花木に登録があります。
収穫前日まで使用可能な作物が多く、出荷直前の防除にも使いやすい一方、ミツバチ・マルハナバチへの影響と同系統剤の連用による抵抗性発達には十分配慮を。
IRAC 9B・29 系統との計画的ローテーションを組むことで、本剤のポテンシャルを最大限活かせます。










