ダニオーテフロアブルはどうやって使う?─かんきつ、りんご、いちご、なす、きゅうり、ピーマンのハダニ類を防除するダニオーテフロアブルの使い方を徹底解説!
- 6月4日
- 読了時間: 10分

果樹・果菜の現場で毎年悩みの種になるハダニ類(ナミハダニ・カンザワハダニ・ミカンハダニ等)。世代回転が早く、既存の殺ダニ剤に対する感受性低下(薬剤抵抗性)が地域ごとに進行している状況で、防除のローテーション設計は年々難しくなっています。
そこで2021年に日本曹達から登場したのが、新規骨格アシノナピル(Acynonapyr)を有効成分とするダニオーテフロアブルです。新規作用機構で卵・幼虫・成虫の全ステージに高活性、しかも気温による効果変動が小さく、天敵・有用昆虫への影響が少ない──IPM体系の中で大きな武器になる剤として、急速に防除暦に組み込まれてきました。
本記事では、適用作物・対象害虫・希釈倍数・使用回数のラベル情報から、現場での使い方、ローテーション設計、関連資材まで徹底解説します。
注意:以下の内容は2026年6月時点で公開されている情報をもとにまとめたものです。実際に使用される際は必ず最新のダニオーテフロアブルのラベル・農林水産省「農薬登録情報提供システム」・メーカー公式情報をご確認ください。
こんな方におすすめ
かんきつのミカンハダニ、りんごのハダニ類に毎年苦戦している方
既存の殺ダニ剤(ピリダーベン・ビフェナゼート・アバメクチン等)で効きが悪くなったと感じている方
いちご・なす・きゅうり・ピーマンの施設栽培でハダニの密度抑制に困っている方
マルハナバチ・チリカブリダニ・ミヤコカブリダニなど天敵・受粉昆虫を使うIPM体系で使える殺ダニ剤を探している方
気温が低い時期(早春・初冬)でも効果が落ちにくい殺ダニ剤を求めている方
カンザワハダニ防除のローテーション剤を組みたい方
1. 商品概要
分類 | 殺ダニ剤(殺虫剤分類・新規骨格) |
登録番号 | 第24213号(日本曹達株式会社登録) |
種類名 | アシノナピル水和剤 |
有効成分 | アシノナピル 20.0% |
作用機構コード | IRAC:新規骨格(従来のIRACグループ番号に割当てがなく、未分類扱い/登録時時点で既存殺ダニ剤と交差抵抗性なしと説明) |
製剤形態 | フロアブル(類白色水和性粘稠懸濁液体) |
主な対象害虫 | ハダニ類(ナミハダニ、カンザワハダニ、ミカンハダニ、リンゴハダニ 等) |
主な使用場面 | 果樹防除暦(かんきつ・りんご・なし・もも・ぶどう・おうとう)、施設果菜(いちご・なす・きゅうり・ピーマン・メロン・すいか)、茶園、花き類 |
毒性 | 普通物(毒劇物に該当しない) |
製造販売元 | 日本曹達株式会社 |
2. 特長・メリット
2‑1. 新規作用機構で既存剤抵抗性ハダニにも効く
アシノナピルはこれまでの殺ダニ剤とは異なる新規骨格・新規作用点を持つ化合物で、ピリダーベン(IRAC 21A)、ビフェナゼート(IRAC 20D)、アバメクチン(IRAC 6)、エトキサゾール(IRAC 10B)など既存剤に感受性が低下したハダニにも優れた効果を示します。
2‑2. 卵・幼虫・成虫の全ステージに活性
一般的な殺ダニ剤は「卵だけ/成虫だけ」など特定ステージに偏ることが多いですが、ダニオーテフロアブルは卵・幼虫・若虫・成虫すべてに活性を示します。1回の散布で世代をまたいで密度を下げられるため、多発期の鎮圧にも、初発時の密度上昇前抑制にも使い分けが可能です。
2‑3. 気温による効果変動が小さく、天敵に影響が少ない
低温期でも効果が安定しているため、早春のかんきつ・りんご、初冬のいちごなどでも使いやすい剤です。また、各種天敵(チリカブリダニ・ミヤコカブリダニ・スワルスキーカブリダニ)・受粉昆虫(マルハナバチ)への影響が少ないと評価されており、IPM体系に組み込みやすいのが大きな強みです(最新の影響期間データはメーカー資料・地域試験で必ず確認)。
ポイント
ダニ防除では、新規骨格(アシノナピル=ダニオーテ)→ IRAC 20D(ビフェナゼート=マイトコーネ)→ IRAC 25(シエノピラフェン=スターマイト)→ IRAC 10B(エトキサゾール=バロック)のように作用機構を変えてローテーションを組むことで、長期的に効果を維持できます。
3. 導入例
作物名/作型 | 投入目的 | 投入量・時期 | 期待される効果 |
かんきつ(温州みかん・露地) | ミカンハダニの夏越え世代の密度抑制 | 2000〜3000倍希釈、200〜700L/10a、ミカンハダニの初発時に散布。本剤1回のみ。 | 卵・幼虫・成虫の全ステージを一気に下げ、夏場の急増を回避。既存剤抵抗性個体にも効果。 |
いちご(促成・施設栽培、マルハナバチ導入) | ナミハダニ初発時の密度抑制と天敵温存 | 2000倍希釈、100〜300L/10a、発生初期に株下から葉裏に散布。2回以内、収穫前日まで使用可。 | マルハナバチや既導入の天敵カブリダニへの影響を抑えながらハダニ密度を急減。 |
りんご(ふじ・露地) | 夏期のリンゴハダニ・ナミハダニ密度低下 | 1000〜2000倍希釈、200〜700L/10a、ハダニ発生初期に散布。本剤1回のみ、収穫前日まで使用可。 | 葉裏に隠れる成虫・卵塊・幼虫を1回でリセット。同一作用機構の連用回避にも貢献。 |
4. 使い方・適切な散布/設置手順
準備物:
動力噴霧器(果樹はSS散布機)、計量カップ、農薬用マスク、不浸透性手袋、保護メガネ、洗眼用清水。葉裏処理のためにノズル角度調整器具があると◎。
希釈倍率 or 設置個体数:
かんきつは2000〜3000倍、りんごは1000〜2000倍、なし・もも・ぶどう・おうとう等の核果類とぶどう・施設果菜は2000倍。茶のカンザワハダニも2000倍。
タイミング:
ハダニ防除は初発時の密度抑制が最も効率的。葉あたり1〜数頭の段階で散布するのが理想。多発後は薬液到達率が落ちるため、密度上昇前の早めの散布を推奨。
手順ステップ:
規定量を計量 → 少量の水で予備希釈(フロアブル剤は撹拌しやすい) → タンクに投入 → 規定量まで水で希釈 → 連続撹拌 → 葉裏まで届くよう均一散布 → 散布後はタンク・配管・ノズルを十分洗浄。
注意点:
本剤の使用回数は果樹で1回、施設果菜で2回以内、茶で1回。同一作物への連用は厳禁。
同一作用機構の連用は耐性発達を早めます。年間1回(果樹)に限定し、他作用機構剤と組み合わせて使うのが原則。
散布後の降雨でも一定の効果は維持されますが、散布後すぐの強雨は再散布検討の目安。
適用作物群に属する作物または新品種に初めて使用する場合は、使用者の責任で薬害確認後に本散布してください。
カブリダニ製剤を放飼している施設では、放飼前後の影響期間をメーカー資料で必ず確認してから使用。
Tip:
ハダニは葉裏に集中するため、噴口を斜め上向きにして葉裏に薬液を当てるのが最大効果のコツ。果樹のSS散布では樹冠内部にも薬液が届くよう、走行速度・送風量を調整してください。
作物別適用表(FAMIC農薬登録情報提供システム/メーカー公開ラベル調査結果ベース)
作物名 | 適用病害虫名 | 希釈倍数 | 使用液量 | 使用時期 | 本剤使用回数 | 使用方法 |
かんきつ | ミカンハダニ | 2000〜3000倍 | 200〜700L/10a | 収穫前日まで | 1回 | 散布 |
りんご | ハダニ類 | 1000〜2000倍 | 200〜700L/10a | 収穫前日まで | 1回 | 散布 |
なし | ハダニ類 | 2000倍 | 200〜700L/10a | 収穫前日まで | 1回 | 散布 |
もも | ハダニ類 | 2000倍 | 200〜700L/10a | 収穫前日まで | 1回 | 散布 |
ネクタリン | ハダニ類 | 2000倍 | 200〜700L/10a | 収穫前日まで | 1回 | 散布 |
ぶどう | ハダニ類 | 2000倍 | 200〜700L/10a | 収穫前日まで | 1回 | 散布 |
おうとう | ハダニ類 | 2000倍 | 200〜700L/10a | 収穫前日まで | 1回 | 散布 |
小粒核果類 | ハダニ類 | 2000倍 | 200〜700L/10a | 収穫前日まで | 1回 | 散布 |
いちご | ハダニ類 | 2000倍 | 100〜300L/10a | 収穫前日まで | 2回以内 | 散布 |
なす | ハダニ類 | 2000倍 | 100〜300L/10a | 収穫前日まで | 2回以内 | 散布 |
すいか | ハダニ類 | 2000倍 | 100〜300L/10a | 収穫前日まで | 2回以内 | 散布 |
ピーマン | ハダニ類 | 2000倍 | 100〜300L/10a | 収穫前日まで | 2回以内 | 散布 |
きゅうり | ハダニ類 | 2000倍 | 100〜300L/10a | 収穫前日まで | 2回以内 | 散布 |
メロン | ハダニ類 | 2000倍 | 100〜300L/10a | 収穫前日まで | 2回以内 | 散布 |
茶 | カンザワハダニ | 2000倍 | 200〜400L/10a | 摘採14日前まで | 1回 | 散布 |
花き類・観葉植物 | ハダニ類 | 2000倍 | 100〜300L/10a | 発生初期 | 2回以内 | 散布 |
※ アシノナピルを含む農薬の総使用回数も同じ回数です(現行ラベルでは本剤=アシノナピル単剤として運用)。同一成分の連用は耐性発達を早めるため、必ず他作用機構剤とローテーションしてください。
5. 関連資材との相乗効果
商品名 | ダニオーテフロアブルとの使い分け・組み合わせ目的 |
マイトコーネフロアブル | ダニオーテフロアブルとは効き方が違う殺ダニ剤です。ハダニの幼虫・若虫を狙いたいときに、ローテーション剤として使いやすいです。 |
スターマイトフロアブル | ハダニの密度が上がってきたときに使いやすい殺ダニ剤です。ダニオーテフロアブルの後に、別系統の薬剤へ切り替えたいときの候補になります。 |
バロックフロアブル | 卵や幼虫の段階からハダニを抑えたいときに使いやすい薬剤です。ハダニが増える前の予防的な防除として、ダニオーテフロアブルの前に組み込みやすいです。 |
ミヤコトップ | ハダニを食べる天敵資材です。ハダニが少ないうちに放飼し、ダニオーテフロアブルなどの薬剤と役割分担して密度を抑える目的で使います。 |
アビオン-E | 薬液を葉に付きやすくする展着剤です。ダニオーテフロアブル散布時に、葉裏への付着を高めたいときの混用候補になります。 |
6. FAQ
Q1:ダニオーテフロアブルは同じほ場に何回まで使えますか?
A:作物により異なります。果樹(かんきつ・りんご・なし・もも・ぶどう・おうとう等)は本剤1回のみ、施設果菜(いちご・なす・きゅうり・ピーマン・メロン・すいか)は2回以内、茶のカンザワハダニは1回です。アシノナピルを含む農薬の総使用回数も同じ回数で設定されています。同一作用機構の連用は耐性発達を早めるため、年1回(果樹)を基本に他剤とローテーションしてください。
Q2:ダニオーテフロアブルとマルハナバチ・チリカブリダニ・スワルスキーカブリダニとの併用は大丈夫ですか?
A:メーカーは天敵・有用昆虫への影響が少ないとアピールしており、IPM体系での活用を想定して開発されています。ただし放飼前の散布が基本で、放飼後の散布可否・影響期間は地域・天敵種ごとに異なるため、必ずメーカー公表のIOBC評価・地域試験成績で確認してください。マルハナバチを導入している施設では、薬剤が葉面で乾燥してから巣箱を再オープンするのが安全です。
Q3:ダニオーテフロアブルと他の農薬・展着剤との混用はできますか?
A:メーカーが公表している混用事例表で確認してから混用してください。一般的なアルカリ性薬剤(ボルドー液・石灰硫黄合剤等)との混用は避けるのが安全。展着剤(アビオン-E・まくぴか・ダイン等)との混用は適否を最新表で確認し、初めての組み合わせは小面積で薬害テストを行ってください。
Q4:既存剤の効きが悪くなったハダニにダニオーテは効きますか?どうローテーションすればいいですか?
A:ダニオーテフロアブルは新規骨格・新規作用機構で、ピリダーベン(IRAC 21A)・アバメクチン(IRAC 6)・ビフェナゼート(IRAC 20D)・エトキサゾール(IRAC 10B)など既存剤に感受性が低下したハダニにも効果を発揮するとされています。ローテーションはマイトコーネフロアブル(20D)→ ダニオーテフロアブル(新規)→ スターマイトフロアブル(25)→ バロックフロアブル(10B)のように作用機構コードを毎回変えるのが鉄則です。
Q5:効果が出にくいときに見直すべきポイントは?
A:
葉裏処理:ハダニは葉裏に9割以上集中。葉裏に薬液が当たっていないと卵塊・成虫が残ります。ノズル角度を斜め上向きに。
散布水量:果樹は200〜700L/10aを基本に、樹冠全体が濡れる量を。施設果菜も100〜300L/10aを確保。
初発時の早期発見:多発してからでは薬液到達率が下がります。葉あたり1〜数頭の段階で散布開始。
展着剤:アビオン-E・まくぴか等で葉面付着を補助(混用適否は最新表で確認)。
世代ごとの剤替え:同一作用機構を続けると数世代で耐性が出現。IRACコードでローテーションを記録管理。
7. まとめ
ダニオーテフロアブルは、新規骨格アシノナピル20.0%を有効成分とする殺ダニ剤で、卵・幼虫・成虫の全ステージに高活性、気温による効果変動が小さく、天敵・有用昆虫への影響が少ない──IPM体系の中で大きな武器となる剤です。
既存剤に感受性が低下したハダニにも効果を発揮するため、ローテーションの新しい選択肢として防除暦の更新に最適。一方で本剤の使用回数は果樹で年1回・施設果菜で2回以内と限定的なので、必ず他作用機構剤と組み合わせて使うことが長期的な効果維持のカギになります。













